. SCPまとめ【ネタバレ解説あり】 | 退屈ブレイキング
SCPまとめ【ネタバレ解説あり】 | 退屈ブレイキング
SCPまとめ【ネタバレ解説あり】 | 退屈ブレイキング

号泣必至!泣ける・切ない・感動系の傑作SCPまとめ【ネタバレ解説あり】

発見日: 199█/03/25

日付が変わる度、私とあなたの距離は遠ざかっていきます。私の知るあなたは私の記憶のまま、あなたの知る私はあの時のままで。

あなたは今の私のことを知らないのでしょう。ただ私だけがあなたから離れていきます。もしくは、私があなたを置き去りにしてしまったのでしょうか。

今も未来もやがて、過去になります。 私は、あなたが将来きっと先に逝くであろうと言う事実に耐えられませんでした。 今はもうあなたを失うことはありません。ただ、あなたの未来と、あなたとの未来も、私は奪ってしまいました。こんなつもりではなかったのです。私もあなたと共に、ずっとおなじ日々をおくれると思ったのです。

きっとこれは、罰なのでしょう。

あなたより先に逝くであろう私を、私の我が儘を許してください。あなたが朝私を起こすときに、どうか、扉を開けてください。

この書類は日付が変わっても 元の位置に戻ることがなかったため 誰かが105号室の外部から持ち込んだ ものであることが分かっています。

そしてその"誰か"とは 間違いなく「ヨリコ」自身でしょう。

この手紙からは ヨリコが母を深く愛していたということ、 そしてその愛ゆえに母がいずれ自分よりも 先に死んでしまうという現実に耐えきれず 何らかの方法で105号室を 永遠に同じ一日を繰り返す異常な空間に変化させ その中に母を閉じ込めることで 母の死という未来が決して訪れないように してしまったことが汲み取れます。

自分のエゴで 母を一生死ぬこともできない 異常な存在の一部にしてしまったヨリコは そのことに罪悪感を抱きながら いつか母が自分の部屋の扉を開ける 日が訪れること(=母がこのループから解放されること) を望み続けていたのです。

ヨリコは確かに当初の望み通り 「母が自分より先に死ぬ」痛みを味わうことなく この世を去ることが出来たのでした。

感想

特に私の場合、 昨年母を大腸癌で失っていますので この報告書を読んだときは ヨリコの気持ちが痛いほどわかりました。

もし自分がヨリコの立場だったなら 愛する人を異常な存在としてでも 生きながらえさせる道を 本当に選ばないと言い切れるのだろうか。 とても哀しく、同時に深く考えさせられるお話でした。

SCP-2420 ある忠犬

どんなオブジェクト?

説明: SCP-2420は人間(本名ジョン・█████)であり、イエイヌ(Canis lupus familiaris)を外見・記憶ともに、かつて自身のペットだった犬と同じ姿(SCP-2420-1個体)に変化させる能力を持っていました。

SCP-2420は ジョン・█████という名の 深刻な鬱状態にある人間の男性で、 SCP-2420が認識したイヌ、 もしくはSCP-2420を認識したイヌが SCP-2420の意思に関わりなく かつてSCP-2420が飼っていたボーダーテリア犬と 全く同じ姿に変化するという不思議な異常性を有していま した 。 ・・

変化後のイヌ(SCP-2420-1)は どの様な方法によっても傷つくことが無く、 また変化後の犬を肉眼以外の方法(写真や動画)で記録した場合は 変化前の元のイヌの姿が映し出されるという これまた不可思議な性質が確認されています。

SCP-2420とマティの絆

収容プロトコルとオブジェクトの 説明に続いて添付されているインタビューログには 財団側の担当者であるヘイドック博士と SCP-2420とのインタビュー記録が 二回に分けて記録されています。

SCP-2420の初期インタビューログ

1回目のログは SCP-2420がサイト-213に初めて 入場したときに記録されたものです。

SCP-2420: マティだ。

ヘイドック博士: 何-

SCP-2420: 先生、俺の事はどう呼んだって構わないけど、あの子には名前があるんだよ。それがマティだ。マチルダの略だよ。彼女のフルネームはマチルダ・メイ。マチルダ・メイ・█████かな。

記録の端々からはSCP-2420が SCP-2420-1、もといマティに対して 強い愛情を感じていたことが ひしひしと伝わってきます。

またこのログからは他にも ・SCP-2420が睡眠障害を抱えていること ・マティを飼い始めたときには既にSCP-2420の両親が亡くなっていたこと ・マティは賢い犬だったが生前に何らかの異常性を発揮したことはなかったこと ・SCP-2420の不注意でマティが散歩中に車に轢かれて死んだこと ・SCP-2420がその後自宅の裏庭にマティを埋葬したこと ・マティの死のショックからSCP-2420が自殺しようとしたその日に初めてSCP-2420の異常性が発現して結果的に命拾いしたこと などの情報を得ることができます。

特にSCP-2420が マティが車に轢かれて死んだ際の様子を語る下りは 同じくイヌを飼っていた身からすると 読むのが辛くなるほどの生々しさがあります。

唯一の愛する家族を失い、 しかもそれが自分の不注意が原因だったとなれば SCP-2420が自殺を考えるほど精神的に 追い詰められてしまったのも無理からぬ事ですね。

しかしこのログを通して読むと まるでマティがSCP-2420を精神的危機から救うために アノマリーと化して再びこの世に 戻ってきたかのように思えます。

事案2420-Aインタビューログ

次のログはSCP-2420の収容から なんと10年もの時間が経過した時点のものであり、 SCP-2420の異常性の消失(事案-2420-A)が 発生した直後に記録されたものです。

あの子は俺の手を舐めて、噛んで、俺の目を見つめた。 彼女を見るのはこれが最後になると気付いたのはその時だ。 あの時になってようやく俺は気付いた。 これはあの子にとって大変な仕事だったんだ、他の犬にくっついて回るのは。 どうしてあんな事が出来ていたんだろうと不思議に思った。 大変だったけれど、あの子は俺を愛していたんだ、多分。

マティの姿は出現のたびに徐々に年老いており※、 「お別れの時間」が迫りつつあることを SCP-2420自身も察していたようです。 (※マティの老化速度は実際の出現時間と比較して早く、 博士はマティに身には通常と違う時間の流れが 働いていたのではないかと推測しています)

SCP-2420との最後の時間を過ごした後、 マティはその手を甘噛みしてアイコンタクトし、 その後まるで別れの挨拶でもするように軽く吠えると 閃光とともに消失したのだとSCP-2420は振り返っています。

SCP-2420: 俺は行きたくない。俺はあの子を忘れて何処かへ行くなんてのは嫌なんだよ。 外に出て、あの子無しで死んでいくのが怖い。

あの子がまた俺と一緒にいるためにやらかした、あの奇妙な出来事を覚えてはいられなくなる。 俺があんな大胆な事をした記憶もだ。

俺はまた自分自身に戻るのが怖い。

また俺はすぐあの橋に向かうんじゃないか、今後はドッグランにあの子が現れないんだと考えると不安になるんだ。

なぁ、あんたが望むならトイレ掃除だって引き受けるよ。 それに、クソッたれ、10年だぞ。 今更どうやって職に就くっていうんだ。 10年。そうだ。

異常性が消失し、望めば記憶処理を受けて 現実世界に戻ることも出来たSCP-2420ですが、 彼はマティと過ごした時間の記憶を保ち続けるために あえて財団に残る意志をヘイドック博士に伝えました。

報告書内にはその後 彼がどうなったのかまでは記されていませんが、 私的には財団の細々とした雑用を手伝いながら 時々マティのことを思い出しつつ 静かに残りの人生を過ごしたのではないかなと 想像しています。

感想

私の場合、4年前に死んでしまった ペットのミニチュアダックスフントと その子が亡くなったときのことが思い出されて 完全に涙腺をやられてしまいました。

SCP-3001「レッド・リアリティ」

どんなオブジェクト?

「ワームホールを通じてアクセス可能な 逆説的な並行/ポケット”非次元”」という 読んでいて頭の痛くなりそうな 説明が並ぶこのオブジェクト。

もう少し簡潔に言い替えるならば「内部のヒューム値が極端に低い異常空間」 と言ったところでしょうか。

ヒューム値というのは一種の財団用語で、 ざっくり説明するとある物体が持つ 現実性の強度を表す値のようなものです。

SCP-3001はその性質故に 仮にその内部に現実世界の物体が混入した場合、 「物体の持つヒューム値 > SCP-3001内部のヒューム値」となり、 その物体の主観的な時間の流れが極端に遅くなるほか 浸透圧の要領で物体の持つ現実性が徐々に SCP-3001内部に流れ出して行って 最後にはバラバラになって消滅してしまうという 恐ろしい結果を引き起こします。

そしてこの報告書には 実験中に起きた地震によって実験装置が破損したことで 予期せずSCP-3001内部に閉じ込められてしまった スクラントン博士がそこで実に5年以上もの間 少しづつ自分の肉体と精神が崩壊していく恐怖をで味わいながら ひたすら苦しみ続けた一部始終が記録されているのです。

どうやって博士の体験は外部に伝わった?

ここまでの解説を読む限りでは「SCP-3001内部での博士の体験が 財団側の報告書に記録されているということは 最終的に博士はどうにかして生還したんだろう」 という推測が成り立つように思えます。

博士が消えてから5年後の2005年のある日 博士の妻である「アン博士」を含む 財団の研究者グループが スクラントン博士が消えたのと 同じ研究室で実験を行っていた所、 突如として実験室内に 血と吐瀉物と肉塊にまみれた LSSコントロールパネルが突如再出現します。

LSSコントロールパネルとは 事故発生当時に博士と共に SCP-3001内に博士と一緒に吸い込まれていた機械装置で これには録音機能が付いていました。

そう、SCP-3001内部で LSSコントロールパネルを発見した博士は この装置に自分が体験した一部始終を 音声データとして記録させていたのです。

そしてそこに記録されていたのは ひたすら孤独で徐々に死が迫るばかりの SCP-3001の内部で博士が 妻のアン博士との思い出を 唯一の心の拠り所としながら耐え続け、 気の遠くなるような時間の流れの果てに SCP-3001の脱出口へたどり着くまでの軌跡でした。

しかし博士が脱出口の存在に気づいた時には あまりにも長くSCP-3001に晒されすぎていたために 博士の肉体は既に原型を留めないほど 激しく崩壊しており、現実に戻っても その瞬間に絶命することが間違いないほど 絶望的な状態に陥っていました。 (それでも意識が残っていたのは SCP-3001による時空間異常の影響)

ただそれでもなお 博士は現実世界に帰還する道を選び、 かくして想像を絶する博士の苦しみを記録した LSSコントロールパネルと 変わり果てた姿になった博士の亡骸が 愛する妻の元へとようやく帰り着くこととなったのでした…

感想

どちらかといえば感動というよりも 無限地獄的な怖さの方が勝る印象のこの報告書ですが 人類未踏の悲惨を極めながらも最後まで 愛する妻を心の拠り所に希望を捨てなかった スクラントン博士と、 研究者として危険だと分かっていながら それでも夫の亡骸に駆け寄らずには居られなかった アン博士の姿に強く心打たれたため 今回選出作の一つとさせて頂きました。

願わくば私達もスクラントン博士にとっての アン博士のように最後の最後で心の支えとなるような 愛すべき人を見つけて、長く大切にしていきたいものですね。

SCP-1522 「夜の海ゆく船たちは」

どんなオブジェクト?

最初はどちらもごく普通の漁船でしたが 1997年、この2隻が乗組員もなしに アラスカ南部沿岸を航行しているのを財団が発見。

さらにこの2隻は クジラの声を模したソナー音を使って クジラの群れと戯れるような動きを見せるなど 明らかに生物的な知性を有していることが観察されたのです。

またSCP-1522には 本来船が出せる最高速度をはるかに超える 超高速で走行する能力があることも記録されています。

強い絆で結ばれた2隻に突如訪れた悲劇

しかしある日 SCP-1522-2が氷山と衝突してしまい その塊が船体を貫通。 これに対しSCP-1522-1は氷山が溶けるのを待ってから SCP-1522-2を安全な水域へと曳航しました。

ところが悲劇はそれにとどまらず、 移動を終えた彼らに向かって複数の ハープーン対艦ミサイルが襲来します。

これはあらゆるアノマリーの破壊を標榜する GOI「世界オカルト連合」所有の船舶からのもので、 先の事故で傷ついていたSCP-1522-2にとっては もはや回避する術のないものでした。

絶体絶命の状況の中、 SCP-1522-1はSCP-1522-2に何かを伝えるように 3回警笛を鳴らし、SCP-1522-2もそれに応えて 4回警笛を鳴らした後、SCP-1522-1は マッハ4に加速していずこかへと去ってしまいます。

その直後に一隻残された SCP-1522-2はミサイルによって撃沈。 その後SCP-1522-2の元に戻ってきたSCP-1522-1も 力尽きたように共に沈没していきました。

感想

しゃべらない船が主役だったことで かえって彼らの心情を想像してしまって とても切ない気持ちにさせられました。

SCP-1762 「ドラゴンの逝く場所 」

どんなオブジェクト?

オブジェクトクラス: Safe Neutralized

元は財団のある職員が所有していた 中と外が銀色のスプレーで塗られた 幅30cmほどのダンボール製の箱(SCP-1762-1)と 時折その内部から飛び出してくる折り紙製のドラゴン(SCP-1762-2)からなるアノマリーで、 箱の蓋には黒のマーカーで"ドラゴンはここに居る"の 文字が手書きされています。

SCP-1762-1が開くタイミングは不定期で、 その際には中から様々な種類の 折り紙のドラゴン(SCP-1762-1)が飛び出してきて 近くにいる人間やドラゴン同士で 戯れるように2〜3時間ほど自由な接触を行った後 箱の中へと帰っていくという なんともメルヘンチックで無害な異常性を有しています。

また確認された現象から推察するに、 SCP-1762-1内部はSCP-1762-2を含む 折り紙製のファンタジー生物が住まう 広大な異世界へのポータルとなっているようで さらに所有者の研究員は子供の頃から その世界と現実を行き来してドラゴン達との間に 強い絆を育んでいたことが示唆されています。

研究員とドラゴンたちの絆と別れ

しかし 20██/██/██、 SCP-1762は11ヶ月以上もの期間にわたって発生したジャバウォック事象なる事象の発生を境に その後一切の異常性を喪失してしまいます。

ジャバウォック事象とは言うなれば SCP-1762内部で起きた種族間の内乱のようなものであり、 それが起きた結果ドラゴン達を含む 多くのSCP-1762世界の住民たちが死亡。 最終的に以下のメッセージを残して SCP-1762は完全に沈黙してしまいました。

主人は言っておりました、貴方達と再び会えることは無いだろうと。 私達は悲しんでいます。 他の者達もそうでしょう。

かつて私達はお互いに夢と目標で頭が満たされていました。 もはやそれらを共有できないのはとても悲しい事です。 主人は言いました、私達は逝かなければならないと。 主人は言いました、私達が新たな幻想を創るのだと。 主人は言いました、貴方達がその一部になることは出来ないと。

私達は悲しんでいます。 私達は貴方達を愛しています。 貴方達を忘却しません。 恐れています。貴方達は私達を忘却してしまうのでしょうか?

またこのメッセージの回収直後、 SCP-1762-1から塩水が漏れ出し、 箱に書かれていた「ドラゴンはここに居る」の文字が「ドラゴンはここに居た」に書き換わる現象が発生しています。

これは異なる世界の壁を超えて友達になった 件の研究員に対する彼らなりの 精一杯のお別れのメッセージだったのでしょうか…

最期に、もう一度だけ。

SCP-1762の無力化から8年後、 突如SCP-1762-1が再活性化し 以下の文字が刻印された アメジストの結晶が排出されたのです。

その後SCP-1762-1は崩壊し、 この結晶は現在、 タケナカという研究員のオフィスに設置された 収容カプセル内に保管されているとのこと。

幼き日の研究員とドラゴン達との間に どんな物語があったのかは一切触れられていませんが それはきっと想像も及ばないくらいに 素晴らしい体験だったのでしょうね。

SCP-2295「パッチワークのハートがあるクマ」

どんなオブジェクト?

近くに臓器に損傷を負った人間がいる場合、 このオブジェクトは口からハサミや 縫い針などの裁縫道具を取り出して 対象者の臓器を模したパッチワーク(SCP-2295-1)を作成し その場から姿を消します。

その後、SCP-2295-1は 未知の方法によって対象者の傷ついた臓器と入れ替わり、 一切の拒絶反応や合併症を起こす事なく その人の正常な臓器として機能します。

また財団が把握している SCP-2295の治療を受けた全ての対象者は その後完全に回復に至っていることが確認されています。

悲しすぎる実験ログ

続いてこのオブジェクトの実験ログに目を通すと 肺・動脈・皮膚を作り上げた最初の3件については SCP-2295は問題なく対象者を回復させています。

しかし4つ目の脳出血を起こした 18歳のDクラス職員への治療は その限りではありませんでした。

SCP-2295の能力にも限界はあるのか、 はたまた脳という器官があまりにも複雑すぎたためか SCP-2295はSCP-2295-1を組み上げることができず、 代わりに対象者にキャンディを与えて その後足首にすがりついてまるで涙を流すように 目から生理食塩水を生成するという振る舞いを見せたのです。

回収された文書-2295

報告書の最後には このオブジェクトには発見された、 大破した郵便配送車両の内部にて 同時に回収されたお見舞いカード(文書-2295) に書かれていた内容が掲載されています。

個人的にSCPに出てくるクマのぬいぐるみというと 主にビルダーベアやらバグジーやらのせいで とにかくヤバイという先入観がありましたが このオブジェクトはその偏見を 完膚なきまでに打ち砕いてくれました。

しかしこのオブジェクトの治療について気になる点が一つ。 それはSCP-2295によって臓器がパッチワークと取り替えられた場合、 その後その人はSCP-2295以外による外科治療を 受けることが難しくなるように思えることです。 (秘密保持的な観点でも)

もしそうであれば 例えばSCP-2295の能力を財団の外で より多くの人のために活かすことは 残念ながら現実的ではないのかもしれませんね…

SCP-4183「自動収容プロトコル」

この報告書については 以前に単独で解説記事を投稿しておりますので 詳細はそちらにてどうぞ。

2020-03-02 22:33:13

SCP-2737 「 一匹の死んだヤツメウナギ」

どんなオブジェクト?

このオブジェクトの特徴の一つが その強力な認識災害であり、 オブジェクトを見たり聞いたりするだけでなく その存在を意識するだけでも 対象に共感性の増大作用を及ぼします。

共感性の増大というのは つまり極端にセンチメンタルな気持ちになることであり 被験者には弁神論、不死性、トランスヒューマニズム、 エントロピーの存在などの概念への異常な執着や 死への恐れ(タナトフォビア)、 重度の鬱症状などの影響が現れます。

凶悪な認識災害かと思いきや…

このように説明部分だけを読むと SCP-3519のようなとんでもなく 悪質な認識災害の元凶にしか思えない本オブジェクト。

しかしその本質は「対象の心の奥底に封印された 心の傷=トラウマを吐き出させることで 結果的に心の快復を手助けする」という 悪質どころか現存するSCPの中でも類を見ないほど この上なく良心的で有用なものだったのです。

報告書ではこのオブジェクトの影響で Dクラス職員が自分の犯した殺人を吐露したり またある博士などは病気で悲惨に亡くなった 父親の記憶を吐き出していますが、こうした 押さえ込まれていた辛い記憶を吐露する行為には 現実でもメンタルヘルスの現場で実践されている暴露療法に近い効果が期待されるものと考えられます。

こうしたSCP-2737の本質は 報告書を読み進めていくうちに 明らかとなるようになっていますが 実は説明の部分からすでに ちょっとした伏線が張られていました。

報告書内「補遺」では SCP-2737の入っていた壺の側面には 古代ローマの歴史家プルタルコスの著書 「動物の知性について」からの抜粋である 上記の文章が彫り込まれていたことが明かされています。

冒頭で説明のあった 壺が西暦100年頃のローマ風であるということと 中の死体がヤツメウナギのものであることは まさにこのことへの伏線であり、 ヤツメウナギの持つ心を癒す力は この文章におけるクラッススの慈悲深さと 関連づけて考えることができるでしょう。

ここでSCP-2737療法と断言されているように 財団は本オブジェクトを自分たちの活動の助けとして 利用することを決定したようです。

主にDクラス関連で日常的に 人道的グレーゾンを犯しまくっている財団にとって、 心の傷を癒すきっかけを作ってくれるSCP-2737の存在は 罪悪感に苦しむ職員を救う強い味方となってくれることでしょう。

感想

ストレートに泣けるタイプの報告書ではないですが 実験ログの中で自分の辛い思い出を吐き出している 被験者たちの姿にはとても胸に迫るものがありました。 程度の差こそあれ、誰だってこうした辛い記憶を 一つ二つは胸にしまい込んでいるものですよね…

SCP-2352「死に体のビデオブロガーと諦めの悪い異次元のファン」

どんなオブジェクト?

オブジェクトクラス: Neutralized (旧Euclid)

その内容はサイモン・Mという17歳の少年(SCP-2532-1)が 身近な出来事やニュースの内容について ひたすら喋りまくるという一見普通の録画映像。

ただ一点、動画に出演しているサイモンが 重度の熱傷を追った死体であるという点を除けば…

ネタバレ

サイモンの死体を蘇らせたのは 別次元から現れた異次元人(SCP-2352-2)であり、 彼が投稿した(生前の分も含めて)動画の内容を記録した文書2352-Uの 64番目の動画の箇所にはSCP-2352-2による蘇生行為の様子が記録されています。

そしてなぜSCP-2352-2がサイモンを蘇生したかといえば それはタイトルが示すようにSCP-2352-2がサイモンの隠れファンであり、 サイモンが死んだ後も動画投稿を続けることを望んだからでした。

しかしこのゾンビ状態はサイモンにとって 決して心地よいものではなかったようで、 死体のサイモンは回数を重ねるうちに SCP-2352-2に対する不満を露わにするようになり、 最後にはとうとうSCP-2352-2も折れて サイモンが安らかな眠りにつくことを認めました。

15/07/18、SCP-2352-放送-129がSimonM34に限定公開設定の動画としてアップロードされました。“___”と題されたこの動画は、SCP-2352-1の遺体安置台の上に座りカメラを直視しているSCP-2352-2と、軽く痙攣しているSCP-2352-1を映したものです。SCP-2352-2は8秒間沈黙した後に発声し始めますが、その発声は現在知られている言語と一致しません。 苦し気な呼吸や咳がSCP-2352-1から聞こえ、SCP-2352-2は手を腕に当てて定期的に皮膚に当てます。6:23、SCP-2352-2はSCP-2352-1に向かって注視し、手を上げて対象の額に当てます。 短い休止の後、SCP-2352-2は男性と女性の声が入り混じったニュートラル・イングリッシュで「さようなら、サイモン」と発声します。SCP-2352-1の口が「ありがとう」という発音の形に動いた後、その身体はぐったりと力の入っていない状態となります。SCP-2352-2はその場に30秒間留まり、SCP-2352-1から手を離し、遺体安置台から降りて画面外へ歩き去ります。その5秒後に動画が終了しています。

SCP-2352-2が一体 サイモンのどこに惹かれたのかは最後まで不明でしたが それでも彼に対して深い敬意と親しみを抱いていたことだけは ひしひしと伝わってきますね。

この事件で一方的に迷惑を被る形となったサイモンも 別れ際には感謝の言葉を述べるなど お互いにわだかまりを残すことなく 綺麗にあの世に旅立つことができたのでした…

感想

異世界人の超技術によって蘇った 死体がYoutubeに動画を投稿するという ホラーテイストバリバリの幕開けから 最後にはまさかの感動路線に着地したこの報告書。

もしあなたがYoutubeのチャンネルを持っているなら そのチャンネル登録者の中に一人くらいは 熱心な異次元世界の住人が紛れている可能性を 考慮しておいても悪くはないかもしれませんね。

SCP-348 「パパの贈り物」

どんなオブジェクト?

側面には”あなたのことを思っています”を意味する漢字(想着你) が刻まれたボウルで、軽微な病気や怪我(軽い咳、鼻水、擦り傷など)が ある誰かがこのボウルと対峙するとその中に まるで父母が作った料理を思い出させるような おいしいスープが出現します。

また対象がこのスープを完食すると 「ちゃんと毎日歯を磨くんだぞ」や 「あなたが幸せで嬉しい」などの 思いやりに満ちたメッセージがボウルの内側にしばしば出現します。

ただし上記の説明が当てはまるのは18歳未満の 子供が被験者だった時のみで、 それ以上の大人がこのボウルに対峙した場合は そうでない場合に比べてスープの味が落ちることが多く、 スープを完食しない被験者も少なくありませんでした。

感想

タイトルと実験例を見る限り、 これは「被験者に対する父親の愛情」が そのままスープの味やメッセージに 変換されるオブジェクトだったのでしょう。

SCP-548-JP 「歌う雨音」

どんなオブジェクト?

こちらも感動できるSCPとして 比較的有名なのですでに ご存知の方も多いかもしれませんね。

SCP-548-JPは雨水※が接触すると ピアノの音色が発生するビニール傘です。 (※必ず自然の雨でなければダメ)

さらに一定時間異常 雨水への接触が継続するとその音色が ショパンやモーツァルトなどの 楽曲の旋律となる現象(SCP-548-JP-A)が発生します。

演奏される楽曲は口頭でのリクエストが可能で、 またSCP-548-JPによる楽曲の演奏技術は 演奏のたびに少しづつ向上が認められるほか 演奏後に拍手をするなどの肯定的な反応を示すことで 上達速度がさらに向上することが確認されています。 (逆に貶すなどすると騒音を鳴らして 貶した人間の鼓膜を破壊するといったマイナスの反応を返します)

ラストコンサートと別れの曲

実験を通じてSCP-548-JPの演奏技術は ますます高まっていきましたがある時 危機的な問題に直面します。

大寒波の影響で3ヶ月も雨が降らない日が続き、 SCP-548-JPの演奏技術の低下、 及び異常性の喪失が懸念されたのです。

この事態を受けた財団は その後の最初の雨が降った日に 200名ほどの職員を集めて SCP-548-JPのための特別なコンサートを開くことを計画します。

実験記録548-107 担当者: 塚原博士 内容: 約███名3の財団職員が聴取する中でSCP-548-JPへ向け、ビゼーの「カルメン前奏曲」、リストの「パガニーニによる大練習曲第3番 嬰ト短調」4、モーツァルトの「ピアノソナタ第11番第3楽章」5をリクエストし、SCP-548-JP-Aが終了する度に拍手と賛辞を送る。 結果: 「ピアノソナタ第11番第3楽章」の演奏を経て、SCP-548-JP-Aの演奏技術は極めて高まったと認められた。音色は終始「楽しそう」「嬉しそう」なものだった。

この試みは結果的に功を奏し、 3曲ほどの演奏を経てSCP-548-JPの演奏技術が 極めて高まったことが確認されました。

SCP-548-JPがSCP-548-JP-Aのリクエストに答えなくなり、 10分間沈黙した後、おもむろにショパンの 練習曲作品10第3番ホ長調(俗称:別れの曲)を演奏したかと思うと その直後にSCP-548-JPが「巨大な何かが衝突した」ように 空高く跳ね上がってボロボロになり それ以降一切の異常性を喪失してしまったのです。

感想

報告書にはSCP-548-JPによる 最後の演奏が「満足感」に満ちたように 感じられたと記載されていること、 そして何よりSCP-548-JPが最後に演奏した曲目を考えると SCP-548-JPは自分の技術の上達に十分な満足感を得て どこか別の世界へと旅立っていったものと推測されます。

SCP-548-JPが次にどこへ向かったのかは不明ですが もしかすると財団世界とは別の世界で 新たな「腕試し」に挑んでいるのかもしれませんね。

SCP-1340-JP 「エンジンにヒビが入ってしまった車」

どんなオブジェクト?

オブジェクトクラス: Euclid Neutralized(推定)

SCP-1340-JPは 2007年に北海道のある会社の代表取締役だった ████ 権三氏(故人)によって購入され、 購入後は主に権三氏の義理の娘だった 由海氏(故人)のために利用されていた 青色のシトロエン・C3(SCP-1340-JP-1)と それに関連する異常現象の総称です。

このオブジェクトは最高で 時速300kmもの速度で走行可能なほか、 速度の上昇に伴って車体が徐々に透明になっていき 最終的には地面以外のあらゆる物体を透過しながら タイヤ痕すら残さず走行するようになります。

権三氏の殺害とSCO-1340-jpの失踪

財団がこのオブジェクトを認知したきっかけは 2007年8月1日に発生した████ 権三氏の殺害事件でした。

この事件において、 ████ 権三氏の死因が明らかに轢死であるにも関わらず 彼を轢き殺した車のタイヤ痕が 現場より数十メートル先で突如消失していた事から 警視庁はこの事件を異常事件の疑いありと認定。

間も無く財団も警察内部に 潜入していたエージェントを通じてこの事件を知り、 警視庁側に誘導工作をかけた結果 警視庁と財団の合同捜査が開かれることとなったのでした。

またこの際に凶器となった車は 権三氏所有のシトロエン(SCP-1340-JP-1)であり、 その後SCP-1340-JP-1と それに搭乗していたと思われる 殺害犯(SCP-1340-JP-2)は 上述した異常能力によって 2回にわたる警察の追跡を振り切り、 事件の発生から3日後に知床の海岸付近で 誰も乗っていない状態のSCP-1340-JP-1のみが発見されています。

SCP-1340-JP-2の行方は 現在に至るまで明らかになっておらず 財団に収容されたSCP-1340-JP-1は その後10年の間一切の異常性を 発現することはありませんでした。

ネタバレ

この報告書の真相は 報告書末尾の補遺1340-JP-3に添付された 佐藤氏によるスケッチを目にしたときに 初めて明らかとなります。

恐らく最後まで読まれた方は気づいたかと思いますが結論から言えばSCP-1340-JP-2は実在の人間ではなく 何らかの理由で魂を得た一台の自動車でした。 (つまりSCP-1340-JP-1=SCP-1340-JP-2)

そして佐藤氏へのインタビューや SCP-1340-JP-2の日記の描写を見るに 義父の権三氏からこのSCP-1340-JP-2を 買い与えられた由海氏はどこかの時点で その異常性に気づいたものの そこで恐れずにコミュニケーションを図った結果 だんだんとお互いの心の距離が縮まっていき 最終的に有機物と無機物の垣根を超えた 恋愛関係に至ったものと推測されます。 (もっとも当初のSCP-1340-JP-2は 人間に比べていささか 感情の機微に乏しいように描写されていましたが)

しかし由海氏は権三氏から受けた 何らかのひどい行為※を苦にして自殺。 (※具体的に何をされたのかは不明)

由海氏の死後に生前に 由海氏から手渡されていた手紙で 全ての真実を知ったSCP-1340-JP-2は 権三氏を呼び出して轢殺し、 その後自らの能力を使って 警察の追跡をかいくぐりながら 生前の由海氏が故郷だと語っていた 知床の海まで逃亡したものの そこにたどり着いた時点で全ての力を使い果たし 由海氏への深い愛情を心に感じながら 人間でいう所の「死」を迎えた というのがこの物語のおおまかなあらすじです。

感想

最後の最後までSCP-1340-JP-2のことを ちょっと変わった人間の彼氏だと思って読んでいたので 最後のスケッチを見て全ての意味を理解したときには 思わず「えぇっ!?」と声が出てしまいました。

そして、最初はぶっきらぼうで 人間(?)味の薄かったSCP-1340-JP-2が 由海氏への愛に気づいて ありったけの感情を吐露する 日記の最後の描写もまた素晴らしいです。

自分がまさか車と人間の恋愛話に 心動かされる日が来ようとは思っても見ませんでしたよ。 いやほんとに。

ちなみにこの報告書には 自殺を考えていた時期の由海氏が 友人に送っていた手紙という体で書かれた 同著者によるtaleがあり、 こちらを読むと由海氏の抱えていた 痛切な思いがより深く理解できるようになっていますので 本報告書を読んで感動したなら ぜひこちらにも目を通してみてください。

SCP-147-JP 「 この檻の外へ」

どんなオブジェクト?

オブジェクトクラス: Euclid Neutralized

海洋学者とされている男の家で 檻に閉じ込められていたところを 近くに住んでいた当時12歳の 少年SCP-147-JP-1によって助け出され 少年の家に匿われていましたが そこに訪れた自動相談所の職員※が SCP-147-JPを発見し、最終的に財団が 少年ごとSCP-147-JPを収容しました。

ネタバレ

SCP-147-JPは最終的に 少年を自由の身とするために収容違反を犯し 半ば自殺に近い形で死を迎えてしまいます。

█████博士: 彼女自身がそれを奪っているのかもしれず、それは耐えられないと言った。檻の中に閉じ込められ、自由を奪われる辛さを知っているからこそ何とかしてやりたいのだとも言っていた。彼女はほんの一瞬だけれども、あの子のおかげで自由を得る事が出来た、それでもう充分だと。そんなことを言っていた。 エージェント███: 他には何か言っていましたか? █████博士: そしたら彼女は、自分があの子にしてあげられることは1つなんだ、と言っていたよ。 エージェント███: それが何なのか、心当たりはありますか? █████博士: 心当たり? 私たちはそれを見たじゃないか。

またこのSCPは続いてご紹介する SCP-243-JP、SCP-998-JPと物語が繋がっており 通称「恩人三部作」と呼ばれています。

SCP-243-JP 「 恩人へ」

どんなオブジェクト?

普段は非活性状態にありますが 過去に誰かに命を救われた経験がある人物が 受話器を持ち上げた場合のみ、 その人を救った人物と5分間だけ 通話することが可能となります。

ネタバレ

この報告書には3つの実験ログが掲載されていますが 中でも注目すべきなのが15年前に 火災からある消防士によって救われたものの その消防士は救助時に負った火傷が原因で 死亡してしまったという過去を持つ エージェント█████(♀)を対象とした3つめのログです。

このログの中でSCP-243-JPは 火災当日の恩人の消防士の元へと繋がり、 さらにその際にエージェント█████が タイムパラドックスの危険があるにも関わらず その消防士が火災で死んでしまうという事実を伝えたため 実験は急遽中止、その後彼女は 危険な行動の責任を問われて 財団のフロント企業へと左遷されてしまいました。

しかし、エージェント█████が 消防士にその事実を伝えたにも関わらず 未来改変が起きなかったことから その消防士は死ぬと分かっていながらなお 救出活動に向かったことが推測されています。

SCP-147-JPとの関連性

報告書内に名言はありませんが ここで登場する消防士は SCP-147-JPに登場した「少年」の 未来であったことが著者である grejum氏の作者ページにて明かされています。

大人になった少年は かつてSCP-147-JPが自分にそうしてくれたように 自らの命を犠牲としてでも他者を生かす道を選んだのでした。

SCP-998-JP 「外宇宙通信電波」

どんなオブジェクト?

SCP-998-JPは財団の所有する 日本の天文台のひとつで受信された 外宇宙より発信される強力な通信電波で、 この電波に含まれる文字データは 発信源に存在する生命体(SCP-998-JP-1) とのコミュニケーションを可能とします。

SCP-998-JP-1は ノーゴと自称する惑星の住民で、 財団世界より幾分進んだ科学技術を 持っていることが予想されています。

友好的接触…だったはずが

SCP-998-JPを用いたやり取りは 初めの頃こそお互いに言葉が理解できなかったものの SCP-998-JP-1はその優れた言語解析能力によって 急速に日本語を習得。

何度かのやり取りを経て 意思の疎通もスムーズになってきた頃に SCP-998-JP-1側が地球に訪れて 人類と友好的な接触を図りたいという提案を持ちかけ、 この提案は最終的にO5評議会の決議で可決されます。

その後SCP-998-JP-1は 大船団を率いて地球へと接近しましたが 社会的パニックを危惧した財団側は 各国政府に戒厳令を伝達。

さらに国連と財団の協力のもとで 国連平和維持軍(PKF)の人物を事務総長とする 「国連宇宙監視司令部(UNSSC)」が秘密裏に創設され、 SCP-998-JP-1への対応はこの組織が 地球を代表して当たることとなりました。

しかしこの組織は所詮急拵えの組織に過ぎず、 さらに例の事務総長が自分の権限を利用して暴走、 独断で組織を動かし、あろうことか SCP-998-JP-1への先制攻撃を画策し始めたのです。

二つの種族の危機を救ったたった一人の英雄

人類とSCP-998-JP-1との 全面戦争が秒読みとなった危機的状況の中、 SCP-998-JPの通信監視員として 一時的にUNSSCに加わっていた 一人の財団職員がとったある行動によって 事態は思わぬ方向へと動き始めます。

なんとこの職員、 自分の仕事に不満があったのか 例の事務総長に直接辞表を渡そうとしたところ その動作を何か凶器を取り出そうとしたのだと 勘違いされた挙句に事務総長の警備兵によって射殺されてしまったのです。

しかしこの行為によって 過剰防衛を疑われた事務総長は裁判所に出頭。 このことでSCP-998-JP-1への攻撃が延期となり さらにその間にSCP-998-JP-1の船団が 急遽地球の周回軌道上を外れて 母星へ帰還するというミラクルが重なったことで この財団職員は図らずも人類とSCP-998-JP-1 双方の未来を救った英雄となったのでした。

悲劇の裏に隠された真実

しかしこの話にはさらなる裏がありました。 件の通信監視員がUNSSCにも内緒で行っていた SCP-998-JP-1側の代表者の一人である ゼメルアとの通信記録が報告書末尾に 添付されているのです。

そしてそこには地球側と同じように SCP-998-JP-1側にも戦争を肯定する人物(ネイルード)がいたこと、 人類との和平を望むゼメルアが ネイルードを食い止めるために なんとか時間を稼ぎたがっていたこと、 そしてそれを知った件の通信監視員が「僕が何とか時間を稼いでみるよ」と 応えていたことが記録されていたのえす。

+:私タチのネイルードが地球人は危険デ こっちを攻撃スルつもりだって -:ネイルードって? +:軍人タチの中で一番偉いヒト ミンナその人の言イナリ 今宇宙船ニ兵器を装備しだしてる -:そんな 地球の人はそっちと争う気はないのに +:私タチのほとんどノ人もソウ思ってる -:確かに、地球の人たちは全員が平和主義とは言えないが だけど僕の母は、自分の命を顧みなかった人の手で火事から救い出されたんだと言っていた 人ってのはそういうもんだ

加えてこの部分、 通信監視員がSCP-243-JPで登場した あの女性エージェントの子供であることが 暗に明かされています。

つまり彼は かつて自分の母を救った消防士のように あえて自分の命を捨てることで(=わざと事務総長に射殺されように仕向けて)より多くの命を救ってみせたのでした。

感想

それぞれ単体で読んでも素晴らしいですが 全てを通して読むことで SCP-147-JP、少年、エージェント█████、 そしてこの通信監視員という 「恩人」の連鎖の繋がりに気づくことができるという 非常に壮大で感動させられるお話でした。

こういうお話を読むと 私のようなしょうもない人間も 何か人の役に立つことをしなくてはと 身が引き締まる思いがしてきますね。

おわりに

こうして並べてみると 日本支部のSCPには親子関係を題材にしたものが多く、 対して欧米文化の色濃い本部のSCPには パートナー(夫婦・恋人)の関係を題材にしたものが 比較的多いように感じられます。

世界中に執筆者がいるSCP財団ゆえに その内容にも文化的な感覚の違いが 現れてくるというのはなんだかとても興味深い事ですね。

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