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電解質:マグネシウム【Mg2+】の役割について

低Mg血症は ICU患者で65% 、 一般入院患者でも20%以上 に達するという報告があり (Noronha JL, Matuschak GM. Magnesium in critical illness:metabolism, assessment, and treatment. Intensive Care Med 2002;28:667-679.)、少し古いですが別の報告でもICU患者で60%、一般入院患者で11%に達すると報告されています(Am J Clin Pathol. 1983 Mar;79(3):348-52.)。

上記のようにICU患者ではかなりの確率で低Mg血症がみられ、低Mg血症が無い患者と比較しても致死率は高いとされています。しかし、 日常的にMgの測定は行われいないために低Mg血症が見逃されている場合も多々ある ことでしょう。

その上、 血清Mg濃度、遊離Mg 2+ 濃度は体内の総Mg量を必ずしも反映しているわけでもなく 、血清Mg濃度や遊離Mg 2+ 濃度が正常であったとしても体内総Mg量が欠乏していることもあります。

Mg 2+ に関わるイオンチャネル

前項にてMg 2+ が低下することでK + とCa 2+ が低下すると説明しました。本項では、Mg 2+ に関わるイオンチャネルの話を絡めて、もう少し詳しく説明します。

Mg 2+ とK +

低Mg血症患者では低K血症を引き起こす ということを先述しましたが、実は 低Mg血症患者では40~60%程度の確率で低K血症を合併 (JAMA. 1990;263(22):3063「Frequency of Hypomagnesemia and Hypermagnesemia」)、 低K血症患者では50%程度で低Mg血症を合併している (J Am Soc Nephrol 18:2649–2652,2007「Mechanism of hypokalemia in magnesium deficiency」)と報告されており、Mg 2+ とK + は密接に関係性があるのです。

Mg 2+ とK + が関わるイオンチャネルが存在しています。主にヘンレループ尿細管に発現している陽イオンチャネルで、 ROMKチャネル (Renal outer medullary potassium channel)と呼ばれています。

ROMKチャネルは細胞内からK + を排泄する機能がある のですが、細胞内のMg 2+ はROMKチャネルの抑制因子であり、 ROMKチャネルと結合することにより細胞外へのK + 排泄を抑制します 。

逆に言えば、細胞内のMg 2+ が減少・・・つまりは低Mg血症になるとROMKチャネルの抑制が解除されて、K + 排泄が亢進されます。これにより尿中へK + 排泄され低K血症が進行するのです。

細胞膜にはNa + /K + ATPseとNKCC2が存在するので、細胞内へのK + 供給は途絶えません。Mg 2+ による抑制がなければ、ROMKチャネルによってどんどんK + は排泄されることになります。

低Mg 2+ を是正させない限り、K + を補充してもK + が改善されない治療抵抗性低K血症となる ことでしょう。

Mg 2+ とROMKチャネル

Jeroen H. F. de Baaij et al. Clin Kidney J.2012 Feb;5(Suppl 1):i15-i24.doi: 10.1093/ndtplus/sfr164.「Regulation of magnesium balance: lessons learned from human genetic disease」

NKCC2についてはこちらへ Mg 2+ とCa 2+

血清Ca 2+ の40%はアルブミン(ALB)などの蛋白と、10%はリン酸、クエン酸、HCO3 – と結合しています。残りの 50%がCa 2+ イオンとして血中にて存在しています 。

Mg 2+ とCa 2+ が関わるイオンチャネルや受容体を見ていきましょう。

Mg 2+ とCa 2+ のいずれかが関わる機構として、カルシウム感知受容体( CaSR :calcium sensing receptor)、Na + /Ca 2+ 交換体(NCX:Na + /Ca 2+ exchanger)、Ca 2+ ATPaseなどがあります。

カルシウム感知受容体(CaSR:calcium sensing receptor)

血中Ca 2+ を感知する受容体。Mg 2+ がこのCaSRを活性化している。また、副甲状腺細胞にも存在し、PTH分泌を調整している。CaSRの活性化でPTH分泌抑制、ROMKチャネルの抑制をする。

Na + /Ca 2+ 交換体(NCX:Na + /Ca 2+ exchanger)

細胞内へNa + を、細胞外へCa 2+ を移動させている。

ATPとMg 2+ の存在下で細胞内へH + を、細胞外へCa 2+ を移動させている。

電圧依存性Ca 2+ チャネル(VDCC:Voltage-dependent calcium channel)

膜電位依存でCa 2+ を細胞内へ取り込むが、Mg 2+ により競合的阻害される。

Yago MD manas J Singh j front biosci 5:D602-618,2000 Mg2+を始めとした尿細管での吸収 志水英明, 藤田芳郎, 伊藤恭彦, 松尾清一,日腎会誌 2008;50(2):91-96.「カルシウム,マグネシウム代謝の考え方」

低Mg血症の場合、PTHの合成は行われているものの分泌不全状態となっているようですCa 2+ を細胞外から細胞内へ取り込むチャネルとして、電圧依存性Ca 2+ チャネル(VDCC:Voltage-dependent calcium channel)が存在します。このCa 2+ チャネルは通常、Mg 2+ により競合的阻害されますが、Mg 2+ が枯渇してくることによってCa 2+ が細胞内へ取り込まれ、CaSRと結合することになるので、恒常的にCaSRが活性化することになります。そのためにPTH分泌が抑制され、さらに骨の PTH に対する反応性が低下することによって低Ca血症が引き起こされます。

さいごに

以上でMg 2+ に関する内容でした。TRPM6やTRPM7、MgtEなどを含めたMg 2+ チャネルについての話もしようとしたのですが、内容が非常に難しくなる予感がして、「この記事どこに向かってるんだ?」となりそうだったのでここまでとしました。

ただ、Mg 2+ は活動電位での役割、心筋保護液での役割、血管の石灰化への影響などに関わってくるため取り扱いたかったのですが、1つの記事で説明できるものではないですし、plegiaに関して語るにも勉強不足ですので、今回は断念させていただきました。

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この記事を書いた人

職歴 現大学病院勤務 取得資格 臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

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