LTspiceで理想オペアンプを使う(1)
4番の「出力インピーダンスが0」という条件は、後述のopampを使う方法では実現できません。opampでは、低周波領域の出力インピーダンスが1Ωに設定されています。(高周波数領域では、出力インピーダンスがもっと下がります) ただし、オペアンプは負帰還を掛けて使う事が多く、その場合、帰還量に応じて、オペアンプの見かけ上の出力インピーダンスはさらに下がりますから、出力インピーダンスが1Ωあっても、実際の回路では困る事はないはずです。
画像をクリックすると、Amazonの購入ページが別窓で開きます。3. opampを使う方法
まず、LTspiceに標準で付いてくる、opampという部品を使った、理想オペアンプのシミュレーション方法について説明します。
なお、3-7節に、opampを使うシミュレーション方法についての要点がまとめてありますので、結論を先に確認したい方は、そちらを先にご覧ください。
3-1. opampを回路図中に配置する図1の様にLTspiceでコンポーネントアイコンをクリックすると出てくるSelect Component Symbolダイアログボックスで、図2の様にOpampsフォルダをダブルクリックしてください。
図1、コンポーネントアイコンをクリックする様子 図2、Opampsフォルダをダブルクリックする様子そうすると、Opampsフォルダの最後の方に、opampという部品が見つかるはずですので、それをダブルクリックして回路図に配置してください。(図3、図4参照)
図3、opampという部品をダブルクリックする様子 図4、opampを回路図上に配置する様子このopampという部品は、オープンループ電圧利得が有限( デフォルト で100dB)という点と、GB積が有限(デフォルトで10MHz)という点と、出力インピーダンスが低周波領域で1Ω(高周波領域ではもっと下がる)という点の3点では理想オペアンプと異なりますが、他の点では、全て理想オペアンプと同じ特性になります。つまり、先に述べた理想アンプの必要条件の1番と2番と4番以外は、全て満たしています。
また、後述する様に、opampのパラメータを変更すれば、理想オペアンプの必要条件の1番と2番に関しては、事実上問題とならない程度に満たす事ができます。
理想オペアンプの必要条件の10番により、出力電圧が電源電圧に制限されないため、opampには電源端子がありません。(言い換えるならば、電源電圧が±無限大とみなさると考えてもいいです)
画像をクリックすると、Amazonの購入ページが別窓で開きます。 3-2. opamp.subをopampに結び付けるopampを使ったシミュレーションを行う場合には、忘れずに"opamp.sub"というファイルを.libコマンドで取り込む必要があります。
opamp.subというのは、opampの中身の回路を記述したファイルです。通常の部品の場合、Select Component Symbolダイアログボックス(図2参照)で選んだ部品のシンボル(記号)は、部品の中身を記述する.subファイルや.libファイルに結び付けられているのですが、どういう訳か、opampの場合は、その結びつけがデフォルトではされておらず、ユーザーが明示的に結び付けなければならないのです。
opampのシンボルとopamp.subを結び付けるには、図5の様にSPICE directiveアイコン(.opと書いたアイコン)をクリックします。そして図6の様に、Edit Text on the Schematicダイアログボックスで、.lib "opamp.sub"と入力し、OKボタンをクリックします。そうすると図7の様に、.lib "opamp.sub"という文字列が回路図中に配置できる様になりますので、回路図中の邪魔にならない所に移動して、クリックして配置してください。これでopampの部品がopamp.subに結び付けられ、シミュレーションが行えるようになりました。
図5、SPICE directiveアイコンをクリックする様子 図6、.lib "opamp.sub"と入力している様子 ↑ 画像をクリックすると拡大 図7、.lib "opamb.sub"を回路図中に配置している様子 3-3. opampの周波数特性をシミュレーションしてみるデフォルト状態でのopampの周波数特性を確認してみましょう。AC電圧源を2つの入力の間に入れて、AC解析をすれば周波数特性が解析できます。
↑ 画像をクリックすると拡大 図8、opampの周波数特性を測るための回路左のV1という部品(円の中に+とーの記号が書いてある部品)は、voltageという名前の部品(電圧源)です。コンポーネントアイコンをクリックし(図1参照)、Select Component Symbolダイアログボックスでvoltageをダブルクリックするとvoltageが回路図上に配置できます。(図9、10参照)
図1(再掲)、コンポーネントアイコンをクリックする様子 図9、voltageをダブルクリックしている様子 図10、voltageを回路図中に配置している様子voltageが回路図中に配置できたら、AC解析用に電圧を設定します。それにはまず先ほど配置したvoltage(V1)を右クリックしてください。図11の様なVoltage Source - V1というダイアログボックスが開きます。
図11、Voltage Source -V1ダイアログボックスもしV1を直流電圧源として使用するなら、DC value[V]の欄に電圧を入力すればいいのですが、今回は交流電圧源にしてAC解析するつもりですので、Advancedボタンをクリックします。
そうすると、Independent Voltage Source -V1というダイアログボックスが開きますので、Small signal AC analysis(AC)のAC Amplitudeの欄に1Vと入力して、OKボタンをクリックしてください。(図12参照)
図12、AC Amplitudeの欄に"1V"と入力している様子図8の回路図の右側のVoutというラベルを入力するには、図13の様にLabel Netアイコン(四角に囲まれたAという文字のアイコン)をクリックしてください。
図13、Label Netアイコンをクリックしている様子そうすると、図14の様にNet Nameダイアログボックスが開きますから、エディットボックス(文字を入力する四角い箱)にVoutと入力して、OKボタンをクリックします。
図14、エディットボックスに"Vout"と入力してOKボタンをクリックする様子そうするとVoutのラベルが回路図上に配置できる様になりますので、適切な位置に配置してください。(図15参照)
図15、Voutのラベルを回路図中に配置した後の様子 ↑ 画像をクリックすると拡大 図8(再掲)、opampの周波数特性を測るための回路図16に示す様に、Simulateメニューの中のEdit Simulation Cndメニューを選んでください。
図16、Edit Simulation Cmdメニューを選んでいる様子そうすると、図17に示す様に、Edit Simulation Commandダイアログボックスが開きますので、AC Analysisのタブを選択後、Type of sweepの欄でDecadeを選択し、Number of points per decadeの欄には100、Start frequencyの欄には10Hz、Stop frequencyの欄には1GHzと入力します。正しく入力できているのが確認出来たらOKボタンをクリックします。
図17、AC Analysisタブで設定値を入力してOKボタンをクリックする様子そうすると、図18に示す様に、.ac dec 100 10Hz 1GHzという文字列が回路図中に配置できる様になりますので、回路図中の邪魔にならない所に配置してください。
↑ 画像をクリックすると拡大 図18、".ac dec 100 10Hz 1GHz"の文字列を回路図中に配置している様子この後、Runアイコン(人が走っているアイコン)をクリックするとシミュレーションが行われます。(図19参照)
図19、Runアイコンをクリックする様子 ↑ 画像をクリックすると拡大 図20、シミュレーション終了後の画面この状態では、グラフに何も表示されていません。そこで、次に図21に示す様に、回路図中のVoutのラベルが付けられた配線上でクリックします。この時、マウスカーソルは、オシロスコープのプローブの様な形になっているはずです。
図21、プローブ状のマウスカーソルをVoutのラベルの配線上に置いた様子 ↑ 画像をクリックすると拡大 図22、デフォルトのopampの周波数特性のグラフこのグラフは、opampが理想オペアンプとは違い、現実のオペアンプに近い動作をしている事を示しています。理想オペアンプの場合は低い周波数の利得は100dBではなく無限大になります。また、理想オペアンプでは、周波数が上がっても利得が低下する事はありません。
opampの様な単極型オペアンプ(ある周波数まで利得が平坦で、ある周波数以降は-6dB/octの傾きで利得が低下するオペアンプ)は、利得が右肩下がりになっている領域で、利得と周波数の積が一定になります。この積をGB積と呼び、Hzの単位で表示します。
周波数特性のグラフからGB積を読み取る一番簡単な方法は、利得が0dBになる周波数を読み取る事です。図22のグラフで利得が0dBとなる周波数を読み取ると、10MHzになりますから、opampのGB積は10MHzという事になります。
安価な汎用オペアンプは、利得(十分低い周波数のオープンループ電圧利得)が100~120dBの物が多く、一方でopampの利得は100dBですから、opampの利得は、標準的だと言えます。
また、安価な汎用オペアンプのGB積は、1MHz~数MHzの物が多く、一方でopampのGB積は10MHzですから、opampは汎用品よりやや高性能と言えそうですが、とびぬけて高性能というほどでもありません。
どうやらopampは、一般的に使われる事の多い汎用品に、おおむね特性を合わせているみたいです。現実の回路の性能の検討をする時には使いやすいかも知れませんが、高周波数の回路のシミュレーションには使えませんし、理論式の検討に使うには全く性能不足です。このままでは面白くありません。
3-4. opampの利得とGB積を変更する実は、opampは利得とGB積の2つのパラメータを変更できる様になっています。
それでは、opampのパラメータを変更してみましょう。
回路図中のopamp(U1)にカーソルを合わせて右クリックすると、図23の様に、Component Attribute Editorダイアログボックスが開きます。
図23、Component Attribute Editorダイアログボックスここで図24の様に、SpiceLineをAol=10Megに打ち換え、SpiceLine2をGBW=1Gに打ち換えて、OKボタンをクリックしてください。
図24、SpiceLineを"Aol=10Meg"に、SpiceLine2を"GBW=1G"に打ち換えた様子このAolというのは、直流におけるオープンループ電圧利得です。
デフォルトのAolは10万倍(100k)でしたから、デシベルに換算すると100dBだったことになります。
設定し直したAolは1000万倍(10Meg)ですから、デシベル換算で140dBです。この140dBという利得はかなり高めで、現実のオペアンプではなかなか実現できている物は少ないのではないでしょうか。
GBWというのはGB積の事です。
デフォルトのGBWは10MHzでしたが、それを100倍の1GHzに上げました。GBWが1GHzのオペアンプと言えば、広帯域用のかなり特殊なオペアンプです。
この状態で、opampの周波数特性を求めてみましょう。Runアイコン(図19参照)をクリックして、もう一度シミュレーションをしてください。
図19(再掲)、Runアイコンをクリックする様子 ↑ 画像をクリックすると拡大 図25、Aol=10Meg GBW=1Gに改善したopampの周波数特性参考までに、デフォルト状態のopamp(Aol=100k GBW=10Meg)と特性を改善したopamp(Aol=10Meg GBW=1G)の特性を比較したのが図26のグラフです。AolとGBWの両方を100倍にしたことで、全帯域で利得が上昇している事が分かります。
↑ 画像をクリックすると拡大 図26、デフォルトのopamp(青)とAol=10Meg GBW=1Gに改善したopamp(緑)の周波数特性以上の例では、元々の周波数特性と比較しやすい様に、利得とGB積をそれぞれ100倍した例を示しました。さらに、本当に理想オペアンプと呼べるような特性を得たいなら、Aolを10 10 倍(200dB)、GBWを10 20 Hzなどと、両方のパラメータに非現実的な大きな数字を設定すればいいです。(図27参照)
参考:10 20 Hzという周波数は、ガンマ線に相当する周波数です。
図27、Aol=1e10とGBW=1e20に設定している様子 ↑ 画像をクリックすると拡大 図28、Aol=1e10とGBW=1e20の場合の周波数特性 画像をクリックすると、Amazonの購入ページが別窓で開きます。 3-5. opampのパラメータを表示するopampの利得とGB積を大きな値に設定すれば、ほぼ理想オペアンプみなしてよい周波数特性が得られる事はお分かりいただけたと思います。しかし、利得やGB積の設定の変更が、回路図上で確認できないのは不便です。回路図を見ただけでは、デフォルトのopampなのか、理想オペアンプ化したopampなのかが、判別できません。
この様な場合、図29の様に、Component Attribute EditorダイアログボックスでSpiceLineとSpiceLine2の2行のVis.の列にチェックを入れると、AolとGBWのパラメータを回路図中に表示する事ができます。
図29、SpiceLineとSpiceLine2の行のVis.の列にチェック(×マーク)を入れている様子 ↑ 画像をクリックすると拡大 図30、AolとGBWの2つのパラメータを回路図中に表示した様子次のページ ではopampの出力インピーダンスの話をします。
このページで使われている用語の解説
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- LTspiceでビヘイビア電源ほか(ねがてぃぶろぐ)電圧制御電圧源が理想オペアンプとして使える事が簡単に説明されている。