J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(シャコンヌ,他)
バッハとヘンデルは別の場所で活躍しましたが、同い年のドイツの作曲家です。ドイツ人のテレマンも近い世代です。この3人は、バロック後期を代表する大作曲家です。それまではバロック音楽はコレッリ、ヴィヴァルディなどのイタリア系とリュリ、シャルパンティエなどのフランス系の2つに分かれていました。フランス・バロックの始祖ジャン・バティスト・リュリはイタリア人ですが、フランスの宮廷に仕え、フランス・バロックを作りました。
そこに現れた3人のドイツ人(バッハ、ヘンデル、テレマン)は、 イタリア風の音楽と、フランス風の音楽を上手く組み合わせて、新しい音楽 を作曲していきます。特にヘンデル、テレマンはギャラント主義を取り入れ、古典派への道を開いていきます。既に調性音楽も理論的なベースも完成していて、調性音楽が隆盛してきます。
バッハは先進的な部分を取り入れつつもギャラント主義には向かわず、独自の方向に発展したようです。これには ドラマティックな音楽を得意としたブクステフーデの強い影響 が感じられます。ちなみに息子のC.P.E.バッハはギャラント主義の大家です。また、息子の一人でモーツァルトの師匠であるJ.C.バッハもギャラント主義で、世の中は古典派に向かい始めた所でした。
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ■ソナタ第1番 ト短調 BWV1001第1楽章:アダージョ第2楽章:フーガ(アレグロ)第3楽章:シチリアーナ第4楽章:プレストフーガは説明の必要はないと思いますが、一般的に主題がずれて入り、対位法で曲を作っていくものを指します。最初に主題が現れるときは主調で、2番目の主題が入るときには5度上から同じメロディが入る場合が多いです。パイプオルガンや鍵盤楽器では、フーガは様々な規則があり、形式もまとまっています。ただ、これはバッハの時代に完成したもので、その前後の時代は完全なフーガという形式は存在しません。シチリアーナは、イタリアのシチリア島から来ていますが、船で波に揺られるような6/8拍子の曲です。地中海を中心に似た様式の曲が多く「舟歌」も同系です。 第4楽章プレストは有名 ですね。
■パルティータ第1番 ロ短調 BWV1002第1曲:アルマンド第2曲:コレンテ第3曲:サラバンド第4曲:テンポ・デ・ボレア
アルマンドはドイツの農民の舞曲から取り入れられたものです。最初はテンポは速めだったそうですが、バッハの時代には緩徐楽章に使われることが多いです。アンダンテに近いと思います。コレンテはイタリアの舞曲で、フランスではクーラントと呼ばれます。 サラバンドは有名 ですね。3拍子の音楽でテンポは遅めですが、バッハの時代でももう少し早かったといわれています。中央アメリカ起源の舞曲ですが、あとでまた説明します。この曲はパルティータとありますが、コレッリのソナタの形式に近いです。
■ソナタ第2番 イ短調 BWV1003第1楽章:グラーベ第2楽章:フーガ第3楽章:アンダンテ第4楽章:アレグロ
第1楽章のグラーベは「お墓」という意味ですが、深い意味はなくラルゴに近いでしょうか。
■パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004第1曲:アルマンド第2曲:コレンテ第3曲:サラバンダ第4曲:ジーグ第5曲:シャコンヌ
ジーグはイタリアの舞曲で、主に6/8のテンポの速い舞曲です。4曲目までは、コレッリの形式をベースにしています。バッハのこのシャコンヌは、コレッリ風のソナタの後にシャコンヌが入っているような形です。 10分という長いシャコンヌ ですが、転調を伴っていて、3部形式とも言えます。ちなみにフーガもこの時代になるとヘンデルなどは途中で転調を伴うものがあり、これはソナタ形式の展開部に近いと思います。バッハやヘンデルの時代は、調性音楽の黎明期で古典派の源流でもあります。
■ソナタ第3番ハ長調 BWV1005第1楽章:アダージョ第2楽章:フーガ(アラ・ブレーヴェ)第3楽章:ラルゴ第4楽章:アレグロ・アッサイ
フーガの規模が大分大きくなりました。 ラルゴも有名 ですね。
■パルティータ第3番ホ長調 BWV1006第1曲:プレリュード第2曲:ルール第3曲:ガヴォットとロンド第4曲:メヌエット I第5曲:メヌエット II第6曲:ブーレ第7曲:ジーグ
フランス風の組曲です。 プレリュードが有名 ですね。ルール、ガヴォット、メヌエット、ブーレはフランス・バロックの舞曲です。ジーグはイタリアがオリジナルですが、フランスのジーグはリズムが異なります・ 第3曲ガヴォットとロンド も有名ですね。
有名なシャコンヌはスペイン・イタリア経由で入ってきた3拍子の舞曲で、起源は何とスペインの植民地だった中央アメリカです。イタリア語ではチャッコーナと呼ばれ、一時期流行しました。
近いものにパッサカリアがありますが、明確な区別はなく作曲家次第です。シャコンヌとは全く異なる起源をもっていて、パッサカリアは歌曲の間奏に使われたものが発展した形式です。これが変奏曲となり、たまたまシャコンヌと同じような形式になりました。
さらにこの辺りの3拍子系舞曲はサラバンドを中心に、シャコンヌ、フォリアなども含めて全部関連しあっています。サラバンドの起源は、中央アメリカまで遡ります。その中でシャコンヌは同じ和声進行の上で変奏を行っていくものです。フォリアは変奏元のメロディまで決まっています。
パッサカリアはシャコンヌと結果的に近いものですが、もう少し複雑な場合が多いようです。
イタリアのチャッコーナはこんな曲です。おすすめの名盤レビュー
バッハ作曲無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータの名盤をレビューしていきます。
定番の名盤としては、クレーメル新盤、クレーメル旧盤がいずれも評価が高いです。モダンとバロックの両方の良さを取り入れた名盤として、ムローヴァ盤、イザベル・ファウスト盤が良い演奏です。初めて聴く人はこの4種類から選ぶとこの曲の良さが分かると思います。バロック楽器で聴きたい方はポッジャー盤をお薦めします。
この曲には、現在、様々な演奏スタイルがあります。一つは普通のヴァイオリンにヴィブラートなど現代的な方法で演奏したもの、もう一つは古楽器のヴァイオリンを使用し、バッハの時代にあったであろう演奏様式を取り入れたもの、最後はその中間です。
ギドン・クレーメル (新盤) 名曲に真正面から立ち向かうストイックな名盤ギドン・クレーメルは2つの録音を残しています。旧盤も評判が高く、この曲の「定番」として親しまれてきました。そこに新しい演奏スタイルの新盤をリリースしてきました。こちらはクオリティの高い名盤でロマンティックすぎる表現を排し、楽譜に忠実に真正面から演奏したものです。どちらも甲乙つけがたい名盤です。教会で録音していますが、残響は丁度良いです。艶やかで煌びやかな響きに聴こえます。
ある程度、バロック奏法の影響を受けていますが、基本的には 従来のモダン楽器での演奏スタイルを突き詰めた演奏 です。力強い発音は健在でヴィブラートはあまり掛けていません。一方、根底には強い感情が流れていることが感じられます。まさにエベレストにチャレンジしているような雰囲気で、癒し系の演奏ではなく、バッハの対位法に正面から対峙したストイックな演奏です。ここが凄いのですが、好みの分かれ目とも思います。 3つのソナタのフーガは本当に至高の演奏で、神々しさ すら感じられます。ソナタ第1番のプレストはシャープで速いテンポで一気果敢に弾いていきます。パルティータ第2番のシャコンヌは少し速めのテンポで、鋭いタッチで弾いていきます。 力強く情熱を感じますが、余計なルバートやケレン味はなく 、バッハの楽譜を最大限尊重し、その上での力強く高揚していきます。
バロック・ヴァイオリンでの演奏も素晴らしいですが、クレーメル盤を聴いていると、モダンも古楽器も無く、しっかり楽譜と向き合って最善を尽くした名盤、と感じます。
レイチェル・ポッジャー 完成度の増した古楽器奏法、自然体の名盤レイチェル・ポッジャーの演奏は、古楽器を使用した演奏でももっとも進んだものです。彼女独特の力を極限まで抜いた自然な表現です。これまで力強く情熱的な演奏を聴いてきたリスナーには驚きがあると思います。でも、バロック奏法を知っている人からすると、別に異色な演奏では無く、 とても完成度が高い演奏 です。
レイチェル・ポッジャーは バロック・バイオリンのベテラン であり、バッハよりも古い時代の音楽を極めた演奏家です。例えばバッハよりも前のビーバーという才能ある作曲家の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(ロザリオのソナタを含む)の名盤を録音しています。バッハが力強く情熱的な演奏に耐えられるのは、ブクステフーデのような劇的な作風を持つ作曲家の影響によるものであって、ヘンデルやテレマンを同じ調子で演奏したら、曲が台無しになってしまいます。
さまざまなバロック奏法を使っています。 ノンヴィブラート、短めのフレージング、そしてイネガル(ジャズのスウィングのように音を揺らす) などです。自然体で聴いていて癒されるような音楽になっていて素晴らしいです。
渡辺玲子実力派のヴァイオリニスト渡辺玲子による録音です。楽器はストラディヴァリウスEngleman(1709)を使用しています。 安定した超絶技巧と暖かみがあり時に激しさもある表現 で、バッハの崇高な本質をじっくり味わうことが出来ます。2000年,2001年の録音で音質も良いです。
ナタン・ミルシテイン 強靭で太い音色で王道を行く名盤ナタン・ミルシテインの1973年の録音です。 強靭と言って良い位、力強さのある音色 で、楽譜をしっかり再現したスタイルです。それで物足りなさは全くなく、良く聴いていくと 情感を内に秘めていることが分かります 。録音は1973年で安定した音質です。余計な感情表現は無く、自然さがあり、聴いていて癒される名盤です。
パルティータの2番は、 しっかりした骨太な演奏 です。楽譜を出来るだけそのまま再現していくような、1970年ごろの演奏スタイルで、舞曲もそのまま演奏しています。バロック奏法などまだほぼ無かった時代ですからね。ケレン味がなく、余計な表情付けが無いので、 自然体で心地よく聴けます 。終曲のシャコンヌは力強いですが、この曲は控えめに感情表現をしています。内に熱い感情を秘めていることが分かります。終始力強さはありますが、わざとらしい表現が少なく、まさに 王道を行くような堂々とした演奏 です。
ソナタ3番の第1楽章は 豊かな音量でしっかりした演奏 です。内に情感がありますが、安易な表情付けは控え、譜面通りでストイックさが出ますね。ヴィブラートはかけていますが控えめで、ストレートさがあります。第2楽章の 壮大なフーガは少し速めのテンポでしっかりと演奏 して行きます。移弦の所はシャープさがあり、リズミカルです。響きに暖かみがありストイックさは強調されていません。力強さがあるので、大きな山に登っていくような迫力が自然と出ています。
ミルシテインは超絶技巧を魅せつけるような場面はあまり無いです。技術的にとても安定していて、難しい個所も技巧を魅せつけず、あくまで音楽に正面から真摯に向き合っています。モダン奏法のヴィルトゥーゾ系の演奏の中ではトップを争う名盤です。
ナタン・ミルシテイン Vn:五嶋みどり 大胆に古楽器奏法を取り入れ、優美で澄んだ音色の名盤五嶋みどりの2013年録音の無伴奏です。彼女のファンであっても聴くと驚くと思います。その凄い表現と技術のクオリティの高さはいうに及ばず、とうとう 五嶋みどりがバロック奏法を取り入れた演奏をしている のです。ムローヴァと違ってバロック弓は使わず、モダンボウで軽やかな音色を出しています。
その演奏は、自然そのものです。モダン楽器ならではの透明感と表情豊かなバロック奏法が融合していて、しかもリピートした2回目には装飾やアドリブまでつけているのですから、相当深くバロック奏法を勉強したのでは?と思います。これは適当につけているのではなく、バッハの時代にあった装飾やアドリブのつけ方があるんです。さすがにイネガル(ジャズでいうスウィング)は掛かっていませんでしたので、ポッジャーまでは行かないですが、モダン楽器でここまでやった演奏は無いと思います。
パルティータ第3番など、最初はイブラギモヴァ(バロック・ヴァイオリニスト)が弾いているのかと思ったくらいです。 軽やかで速いテンポで優美ですっきりした響き を聴かせてくれます。筆者が聴いた中では一番の名演です。ソナタも軽妙ですが、 モダン楽器でこれまで演奏してきたように、情熱や力強さを内に秘めているようです 。フーガの迫力も健在なんです。ソナタ第3番のフーガはモダン奏法とバロック奏法の良い所をとったような演奏で、充実感があります。軽やかですが物足りない所は全くなく、新鮮な世界が広がっているように感じます。
パルティータ第2番のシャコンヌは、速めのテンポで、鋭さのある表現です。表面的にはバロック奏法に近いですが、内容はいままでのモダン楽器による情熱的な演奏です。 情熱を秘めているというより、この曲ではかなり表に出していて、充実感のある演奏です。
Vn:五嶋みどり、バッハを奏でる 大胆に古楽器奏法を取り入れ、優美で澄んだ音色の名盤 庄司さやか シャコンヌの凄い感情表現と圧倒的な完成度庄司さやかのバッハ無伴奏パルティータの選集です。前半の第1番、第2番が収録されていますが、 凄いレヴェルの高い演奏で驚きました 。庄司さやかの才能はプロコフィエフで十分知っていましたが、バッハでここまで充実した演奏を繰り広げてくるとは正直、思っていませんでした。
「シャコンヌ」に関しては上にYouTubeを貼っておきましたので、聴いてみてください。感情をここまで上手く入れて盛り上げられるヴァイオリン奏者はバロック、モダン問わずに滅多に居ないと思います。他の曲も庄司さやかの長所である 日本人離れしたリズム感と情熱的な演奏で完成度が高い です。特に日本人のイメージ通りの無伴奏だと思います。何度もCDが発売されていますが、すぐに売り切れてしまうようですね。中古でも値段に折り合いがつけば入手する価値はあると思います。
ヴィクトリア・ムローヴァ モダンとバロックの融合、クオリティの高い名盤ヴィクトリア・ムローヴァは、古楽器ヴァイオリンのソリストと共演する機会が多かったようです。自分が録音する時には、 モダン楽器にピュアガットを張り、バロック弓を使って録音 しました。逆ぞりの弓をバロック弓に持ち帰るのは簡単なことではありません。バロックの奏者に教えを請い、自分でも相当研究しただろうことは、容易に想像つきます。
バロック風な所とモダンな所が上手くミックスされていて、これまでモダン楽器を中心に聴いていた人も自然に聴ける演奏です。テヌートやヴィブラートはありませんが、バロック・ヴァイオリン奏者に比べると力強さがあります。 表現はクールで強靭さがあり、リズムは小気味良く、音色は艶やかで感情豊か です。そのため、今までモダン楽器の演奏を聴いてきて、バロック演奏にも興味を持ち始めた人にも馴染みやすいと思います。初めてこの曲のCDを買う人にもお薦めです。
また、ムローヴァは 技術的にも凄いテクニックを持っていることで有名なヴァオリニスト です。クールな中にも表現力のあるヴァイオリニストであり、バロック風に軽妙に演奏しているとはいえ、ツボを押さえているし、 感情表現も素晴らしいです 。録音も良く、残響が結構あり、非常に響きが美しいです。中庸の表現で聴きやすく、万人にお薦めできる名盤です。
ギドン・クレーメル (旧盤) ロマンティックで情熱的な表現もある名盤ギドン・クレーメルの旧盤は非常に評判が高く、この曲の「定番」として親しまれてきました。新盤が出ても旧盤を愛聴しているファンも多いです。
旧盤はそれまでのモダン楽器でのシゲティあたりからの演奏スタイルの流れの上にあると思います。楽譜に記譜されていることを大事に扱い、ゆっくり目のテンポでじっくり聴かせてきます。一般的なこの曲のイメージに近く、誰が聴いても納得の一枚です。例えば「シャコンヌ」は、 じっくり演奏されていて、聴いていて深みがあり存分に味わうことができます 。ヴィブラートも控えめですが新盤よりは掛けています。ロマンティックな演奏が好きな人にもお薦めです。
イザベル・ファウスト しっかりした音色と古楽器奏法イザベル・ファウストの無伴奏です。2009年録音で音質が良いです。透明感があり、 少しクールな響きが良い雰囲気 を醸し出しています。結構力強さがあります。表現はバロック奏法がベースで、最先端の表現ではないですが、そこがモダン・ヴァイオリンを聴いてきた人にも馴染みやすいと思います。装飾などもそれなりに入っていますが、自然に聴こえるレヴェルです。
パルティータ第2番は しなやかで力強さのある音色 です。少しクールさがあって、ひんやりした響きが心地よいです。舞曲などは リズミカルでバロック舞曲らしい演奏 です。とても音質が良く、息遣いまで聴こえてきます。良く聴くと装飾が入っていますが、あまり目立たないですね。ジーグなども速いテンポですっきり弾いています。終曲のシャコンヌは、少し速めのテンポで、しなやかさと強靭さを併せ持ったような響きです。表面的にはクールですが、情熱を秘めていることとボキャブラリーの豊富です。 とても真摯な演奏 で、クレーメルやシゲティの名盤を思い起こさせます。インテンポでそのまま進むので、 超絶技巧の個所も印象的 です。テンポはあまり変えずに表情を上手くつけていて、シャコンヌらしい演奏です。
基本はバロック奏法ですが、モダン・ヴァイオリンの良さも取り入れて両立させた演奏と思います。バロックもモダンも関係なく、現代のバッハとしてトップを争う名盤です。
ヒラリー・ハーン クールな表現がバッハに良く似合う2017年6月,ニューヨーク州,バード大学,Richard B. Fisher Center(ステレオ/デジタル/セッション)
人気女流ヴァイオリニストのヒラリー・ハーンは、最初に後半のみ録音していました。2017年になって、残りの前半のソナタ、パルティータを録音したため、なんと20年のブランクがある全集になりました。テクニックはあるがクールすぎる、と言われがちなヒラリー・ハーンですが、実際はファンも多く、逆にクールな響きとアゴーギクの少ない自然な表現が魅力です。
バッハの場合は、第3番のパルティータなど軽々と正確に弾いてのけ、明るくリズム感のある均整の取れた演奏で、気軽に楽しめます。第2番のシャコンヌは力強い演奏ですがテンポが速めで、もっと感情的に弾いてほしいと感じる人もいると思います。感情的に深く掘り下げた演奏は沢山あるため、好みの問題ですね。
20年後の録音は、なるほど聴き比べると全然違います。表現力が大幅に向上したことが分かりますし、テンポは遅めですが今風のバッハ演奏になっています。有名曲は1枚目のCDに入っていますが、こちらは 味わい深くて良い です。筆者的には、それでもクレーメルのほうが良いと思いますが、全曲再録音すべきだと思いました。
ヒラリー・ハーンのCDは特に初めて聴く人にお薦め です。譜面に対して正確さがあるので、バッハを正しく聴けると思うからです。好みに合わなければ、次のCDで考えればいいと思います。
ヘンリク・シェリング 艶やかな音色で情感を込めた名盤シェリングの録音です。昔からの定番で、歴史的名盤と言って良いと思います。音質は古さを感じさせますが、ヴィブラートを掛けたロマンティックさと瑞々しさのある演奏で、今では聴けないタイプの演奏です。
シェリングは昔ながらのロマンティックな音色で弾いていますが、 テンポはインテンポでそれほどケレン味はなく 、楽譜をしっかり弾いています。シェリングの場合、ベートーヴェンなどでもそういった演奏が多いですね。パルティータ第1番の前奏曲やソナタ第2番の第1楽章など、 感情表現が必要な所は遠慮なくロマンティックで情熱的な演奏 を繰り広げています。重音をしっかり弾いていて味わい深く響きます。自然体の名演奏です。
歴史的名盤ですが、今聴いても違和感を感じることは無く、むしろバッハの本質に迫った名演だと思います。音色に味があり、レコードで聴くにも良い演奏と思います。
シェリング ヨーゼフ・シゲティ 畏敬の念を抱かせる、渋い音色の味わい深い歴史的名盤ヨーゼフ・シゲティは モダン楽器によるバッハの無伴奏演奏に大きな足跡 を残しました。テクニック的には既に最盛期を過ぎていて今一つです。しかし、それまでの艶やかでロマンティックでヴィルトゥオーゾを強調した演奏から離れ、楽譜をしっかり読み込んで、 一音一音しっかり弾きこんで 、当時のバッハの無伴奏のイメージを覆しました。
今のモダン楽器の演奏の元祖と言え、クレーメル新盤あたりまでは大きな影響を受けています。もっとも最近はバロック奏法が発展してきて、モダン楽器でもそれを取り入れるヴァイオリニストが多くなってきましたけれど。
シゲティの実直な演奏は今聴いても感銘 を受けます。音色も渋く、味わい深いですし、聴いていて癒されます。レコードで聴くのにまさに相応しい録音です。
シゲティは批判されたりもしましたが、他にもプロコフィエフの協奏曲第1番など名曲を見出して世間に広めるなど、重要な活動も多くしています。 まさに歴史的名盤 ですね。
ヨーゼフ・シゲティ 畏敬の念を抱かせる、渋い音色の味わい深い歴史的名盤 ヤッシャ・ハイフェッツ ヴィルトゥオーゾの技術とストレートな表現ハイフェッツは一時代前のヴィルトゥオーゾですが、テクニック面では同時代の他のヴァイオリニストが自信喪失に陥るようなずば抜けた技術の持ち主です。現在のヴァイオリニストならば技術的にはもっと上でしょうけど。1952年と昔の録音ではありますが、少し慣れれば聴くのに問題はありません。むしろ、 昔のヴァイオリンの録音という雰囲気満点 です。
演奏は基本的に速めのテンポで、軽快に進みます。第1番のソナタなど短調の曲はかなり味わいがあります。アルマンドなどは速いテンポながら様々な表現をしています。第3番のパルティータなどはとても良い演奏です。ヴィブラートも少なめで、音色も艶やかすぎず、今聴いても何の違和感もない名演です。第2番の「シャコンヌ」も同様に速めのテンポで、普段情熱的な演奏を聴いている人には物足りないかも知れませんね。
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楽譜・スコア
バッハ作曲の無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータの楽譜・スコアを挙げていきます。
楽譜 電子スコアタブレット端末等で閲覧する場合は、画面サイズや解像度の問題で読みにくい場合があります。購入前に「無料サンプル」でご確認ください。
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