【1記事3分】超音波検査士けんしんのエコーノート
平成元年生まれのゆとり世代の臨床検査技師しています。超音波検査ができる人が増えたり、超音波検査士取得を目指す人同士がつながれるブログになればいいなと考えています。
下肢静脈エコーノート:深部静脈血栓症(DVT)の診断と観察ポイント
下肢静脈エコーノート:深部静脈血栓症(DVT)の診断と観察ポイント
略語のまとめ
- VTE (Venous Thromboembolism): 静脈血栓塞栓症 - 静脈に血栓ができる病気の総称。
- DVT (Deep Vein Thrombosis): 深部静脈血栓症 - 下肢の深部静脈に血栓ができる状態。肺塞栓症の原因となることがあります。
- PE (Pulmonary Embolism): 肺塞栓症 - DVTでできた血栓が肺に流れ着き、肺動脈を閉塞する重篤な状態。
- VTE = DVT + PE: 静脈血栓塞栓症は、深部静脈血栓症と肺塞栓症を合わせた概念です。
Dダイマーを用いたDVTの診断は?
- Dダイマー(+) ⇒ DVTの可能性あり: Dダイマーが陽性の場合、体内で血栓が形成・溶解している可能性が高く、DVTを疑います。この場合、超音波検査などの画像診断でDVTの有無を確認する必要があります。
- Dダイマー(-) ⇒ DVTの可能性は低い: Dダイマーが陰性の場合、DVTの可能性は非常に低いと判断されます。これはDVTの除外診断に非常に有用です。
ポイント: Dダイマーは感度が高い(DVTがあれば陽性になりやすい)ですが、特異度は低い(DVT以外でも陽性になることがある)ため、他の臨床所見や画像診断と組み合わせて総合的に判断することが重要です。
エコーでのポイント:圧迫法の観察
下肢静脈エコーにおけるDVT診断の最も基本的な手技が圧迫法(Compression Ultrasonography: CUS)です。プローブで静脈を圧迫し、血管内腔が完全に虚脱するかどうかを観察します。
- 血栓無しの場合: プローブで圧迫したら静脈内腔は完全に虚脱します。血管内に血栓がないため、圧迫によって血管壁が接します。
- 急性血栓の場合: プローブで圧迫しても静脈内腔は虚脱せず、内部に血栓が低エコーとして描出されます。血栓が新しいため、血管壁にしっかりと付着しておらず、圧迫しても虚脱しません。
- 慢性血栓の場合: プローブで圧迫しても静脈内腔は虚脱せず、内部に血栓が高エコーとして描出されます。血栓が古くなり器質化しているため、圧迫しても虚脱せず、血管壁に強く付着していることが多いです。
※静脈血栓があると静脈径は動脈径より大きくなる傾向があります。これは血栓によって静脈の血流が阻害され、拡張するためです。
圧迫法のフォローのポイント- 総大腿静脈~膝窩静脈: 前回より圧迫時の残存血栓が2mm以上増加している場合、DVTの再発とみなすことがあります。定期的なフォローアップが重要です。
- 静脈弁不全: 静脈の逆流がないかを確認します。弁不全があると、血流が逆流し、下肢静脈瘤やDVTのリスクを高める可能性があります。カラードプラやパルスドプラを用いて血流の方向と速度を評価します。
浮遊血栓とは?
- 血栓の末梢側が血管壁に付着し、中枢側が血管壁に付着せず浮遊している状態を指します。
- 浮遊血栓は、肺塞栓症の合併率が30-60%と非常に高いため、発見した場合は緊急報告を行い、迅速な対応が求められます。
臨床的意義: 浮遊血栓は、血流に乗って肺に到達しやすいため、PEのリスクが非常に高いです。そのため、その存在は直ちに臨床医に伝え、適切な治療方針を決定する必要があります。
ひらめ筋静脈の描出のポイント
- ひらめ筋静脈はひらめ筋(腓腹筋)の間を走行しています。筋肉の間に位置するため、周囲の筋肉と区別して描出することが重要です。
- プローブを横断像で当て、腓腹筋の筋腹をたどるように観察すると、描出しやすくなります。
下肢静脈エコーで見えにくい時の裏ワザは?
- 足関節の底屈・背屈やふくらはぎの圧迫をおさえたりする。⇒これにより、静脈の還流が緩やかになり、血管が拡張し、見やすくなることがあります。
- 患者さんの体位調整: 例えば、下肢を下げて静脈に血液を貯留させることで、血管が拡張しやすくなります。
- プローブの圧迫を弱める: 圧迫しすぎると血管が虚脱してしまい、見えにくくなることがあります。軽くプローブを当てることで、血管が拡張した状態を保てます。
- カラードプラの活用: 血流の有無を確認することで、血管の位置を特定しやすくなります。