Part.2 Classic Sax Player 偉人伝
Classic Saxの現在の隆盛を築いた源流には、その魅力を世に広めた名手たちの活躍があった。サックス愛好家ならば、一度はその名を聴いたことがあるであろうマルセル・ミュールに始まり、フランス、アメリカ、そして日本。同様にイタリア、ドイツ、現在はアジア諸国にもその輪は広がっている。ここでは、サックス愛好家ならば知っておくべきClassic Saxの偉人たちを、実際に師事するなどして交流を持ったサックスプレイヤーに紹介してもらった。彼らの音楽観は、現在第一線で活躍するプレイヤーたちに大きな影響を及ぼしている。そのエピソードからは、「Classic Saxとは何たるか」を読み取ることができるだろう。
Marcel Mule マルセル・ミュールClassic Saxの祖として世界的に知られるマルセル・ミュールは、1901年、フランス・ノルマンディー地方のオルヌ県オーブで生まれた。8歳の時に父親の薦めでサックスを手にしてから、若くして様々な音楽コンクールで優勝するなど、その秘めた才能を開花させていく。22歳で、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団に入隊、また、1942年にはパリ音楽院のサクソフォン科の教授に就任。300人以上の学生を教えたと言われる。Classic Saxの魅力を世に広めた彼のために多くの曲が作曲され、また彼によって初演・編曲された。これらの曲の多くが今日のClassic Saxのレパートリーの中心をなしている。彼が“サクソフォン”という楽器が持つ本来の魅力を開花させ、その存在意義を持たせたと言っても過言ではない。
About Marcel Mule Navigator:フレデリック・ヘムケ(翻訳:佐藤渉)
■その音楽観 ■学んだこと ■師とのエピソードパリ音楽院を一等賞を得て卒業するためには、大抵2年間は在学しなくてはならないのですが、私は1年で卒業しました。ですので、ミュールに習った年月は1年程度になります。 ご存じかもしれませんが、パリ国立音楽院では年度の終わりにコンクール(卒業試験)があり、そのコンクールのために毎年新曲が書かれるのです。私の年はデザンクロの『プレリュード、カデンツと終曲』が新曲で書かれた課題曲でした。コンクールのことは今でもとても良く覚えています。審査員はホールの2階席に座っており、ミュール先生はもちろん、デザンクロ、他の楽器の教授陣もいました。コンクールではスケールも吹くことになっていましたが、ミュール先生が2階席から、「ヘムケさん、C♯メジャーをテンポ152、デタシェ(スタッカート)でどうぞ」と言われ、当時私はかなり速くタンギングできたので、とてもうまくいきました。その後の課題曲でも良い演奏ができ、12名のうち2人だけに与えられた一等賞をもらうことができました。一等賞を得るということは課程の修了と同義になるので、その後私は帰国しました。後年、私とミュールは非常に仲のいい友だちになり、彼の子どもたちがそうしたように、私にも彼のことを“PAPA HOU”(パパ・オー)と呼ぶように言いました。私が南フランスに演奏とクリニックのために行った時には自宅に招いてくれ、奥さんの作ってくれた食事を食べながら長いこと話をしたものです。これは有名な話だと思いますが、彼は教授職から引退した後は楽器のケースを二度と開けませんでしたので、楽器や音楽の話ばかりではなく、家族のこと、人生のこと、いろいろな話をしました。
フレデリック・ヘムケ Frederic L. Hemke Daniel Deffayet ダニエル・デファイエダニエル・デファイエは、フランスのサクソフォニスト。12歳でサクソフォンを始めた彼は、1938年にマルセル・ミュールに師事する。1942年、国立パリ高等音楽院にサックスクラスが開設された当初の生徒となる。ちなみに初代教授は前述のM.ミュール氏。 1940年ごろから、師・ミュールの代役としてパリのオペラ座、オペラ・コミックなどに出演しており、徐々にパリの各オーケストラに客演し、数々の名指揮者と共演。特筆すべきは、かの名指揮者 ヘルベルト・フォン・カラヤン直々の指名により、カラヤン指揮ベルリン・フィルのサクソフォン奏者として何度も出演したことだろう。ソリストとしては、1953年イベールの『コンチェルティーノ・ダ・カメラ』を演奏してデビュー。また同じころ「ダニエル・デファイエ・サクソフォン四重奏団」を結成、1988年の解散までフランス内外で精力的に演奏活動をこなした。1968年マルセル・ミュールの引退に伴い、パリ音楽院第2代の教授に就任。20年間に渡り後進の指導にあたった。ルデュック社より数多くの編曲作品、エチュードを出版。フランス・サクソフォンの伝統を現代に伝える存在とされていたが、2002年の12月、80歳にて死去。
About Daniel Deffayet Navigator:斎藤広樹
■その音楽観 ■学んだこと ■師とのエピソードカラヤン指揮 ベルリン・フィルがサクソフォンを必要とする際、決まってデファイエ先生が指名されていました。ある日、パリのシャンゼリーゼ劇場で『展覧会の絵』のリハーサルを聴くチャンスがあり、クラスの仲間4~5人とバルコニーに隠れるようにして聴きに行きました。チューニングの後リハーサルが始まるのですが、ベートーヴェンばかりで、その演奏会で演奏される曲目はいつまでたっても始まりません。そうしているうちに、デファイエ先生が我々のいる客席に現われ、今晩のプログラムのリハーサルはしないとのこと。今、行なわれているのは来週ベルンで演奏されるものらしいと聞き、その時はちょっと残念にも思いましたが、素晴らしいベートーヴェンのリハーサルを聴くことができて感動しました。もちろんその日の夜の『展覧会の絵』も素晴らしく、ブラボーの嵐でした。次の日、私のレッスンが始まる前「クラシックの大家の作品に比べサクソフォンの作品は……たとえ、それがラヴェルであっても。ドビュッシーであっても……どう思う? ヒロキ」。「……」「我々はサクソフォンに魅力を感じている。しかしながら同時にサクソフォニストであることを残念がらねばならない」。当時の私には強烈な言葉でした。
斎藤広樹 Hiroki Saitoフランス国立パリ高等音楽院をプルミエプリ首席で卒業。サクソフォンを松澤洋、H.R.ポラン、D.デファイエの各氏に師事。第7回(ニュールンベルグ)、第9回(川崎)ワールドサクソフォンコングレスに出演。2004年第10回、2005年第11回韓国馬山現代音楽祭にメインゲストとして招聘され、数多くの新作初演。サクソフォンアンサンブル《ミュゲ》メンバー。九州管楽合奏団メンバー。平成音楽大学、福岡女子短期大学、フォーレ音楽院で後進の指導にあたる。西日本音楽協会賞受賞。 ★私が考える「Classic Sax」 音色、ヴィブラートなど奏法の流行のようなものに惑わされることなく、聴衆が創作者の音楽に胸を打つ演奏をするのが本来のクラシック(標準音楽)サクソフォンだと思います。
Part.1 私が考える“Classic Sax” Part.3 音色を楽しむ名盤&定番CD Yamaha YAS-62 仕上げ違い吹き比べ スピリチャル・ジャズの最前線アイザイア・コリアー公 メジャー・デビュー10周年を飾る全曲オリジナルのニ モダンジャズの名曲をしなやかに吹く♪ THE SAX124連動音源ダウンロードのご案内今話題の人気記事
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