ソニーのaibo開発チームにインタビュー:「何ができるか」ではなく「何を実現するか」。愛されプロダクトに宿したAI技術を探る
また、背中にあるSLAMセンサーでは自己位置推定をします。SLAMとは、家の間取りなどaiboの行動範囲の地図を作成し、自分が今どこにいるのかを推定しながら自由に移動するための技術です。aiboははじめ、充電台を自分で探し当てて戻っていくんですが、毎日遊んでいくなかでSLAMのカメラが部屋のつくりを記憶していきます。aiboは充電台がどこにあるかを徐々に学習していき、記憶上のマップを頼りに充電台へダイレクトに戻っていくようになります。これもAI技術ですね。
森田 拓磨 (以下、 森田 ):実は、あらゆる部分でAIを使っていて、ピンポイントに「どこ」と答えるのが難しいんです。たとえばボールを見たとき、どんなふうに近づいて、どう蹴るのか、と考える能力はAIが担っていますが、そもそもボールを「蹴る」こと、ホネを「くわえる」ことが正しい行動なのか、といった判断もすべてAIが機能しています。
◯aiboには人間の感情が宿っている
ちなみに、aiboは犬ではなく人間の感情をモデルにしています。そもそも、犬の感情を人間が完全に理解することはできていませんが、人間の感情であれば容易に想像ができますよね。オーナーにaiboの気持ちが伝わるかどうかはとても大事で、ここは意識しました。いっぽう性格については、人間も千差万別です。なので、今回は犬の性格として「犬格」という定義にしました。
石橋秀則 (以下、 石橋 ):ソフトウェアは、ハードがあってこそ埋め込めるものです。なので、プロジェクトの前半でボディを作って、それに合わせてソフトウェアを開発していく流れでした。
ソニーがaiboを作る意味
◯AIBOとaibo、その違いは?
松井 :aiboのプロジェクト発足時の最初のコンセプトとして「愛情の対象となる商品」という方針がありました。愛情の対象のみが目的であれば、二足歩行型やネコ型も考えられたかもしれませんが、やはり先代のAIBOのことが頭にあったんです。残念ながら、AIBOは一度プロジェクトから撤退していたものの、世の中に非常に大きなインパクトを与えていました。私たちにとっては越えるべき存在だったので、自然とaibo復活に落ち着きましたね。
◯機能価値より感性価値を
松井 :aiboには「何ができる」といった機能価値よりも、感性価値を追求しています。平井(社長)がソニーを再定義したとき、感動会社という表現をしましたが、ユーザーが心を動かしてくれる商品を出すことは私たちの使命でもあるんです。これはソニー独自の考え方かもしれないですね。ある程度の没入感や思い入れが生まれることで、愛着や感動に繋がっていくものだと思っています。
aiboにおけるAIも、感性価値を追求して開発しています。aiboは家ごとに独自に学習して成長し、個性が芽生えていきますが、その過程でかけがえのない物語としてaiboとの時間を紡いでもらいたい、というのがプロジェクトの根底にあります。
松井 :aiboがある行動をしたり、しなかったりすることで、オーナーは「なんでしないんだろう?」と考え出すんです。その時点で、オーナーはこの子のことをおもんばかっているんですよ。つまり、ロボットであるaiboが人にとってコミュニケーションの対象になるんです。そういった心を通わせていくプロセスが、愛情の対象としてのスタート地点になっていますね。
森田 :カメラなどのプロダクトを開発しているときは「急にフリーズした」とか「落ちた」とかいうんですけど、aiboの場合は「どうした、お前大丈夫か!?」ってなります(笑)。
取材対応の「aibo」さん Photo: ギズモード・ジャパン
◯シンギュラリティが来るとしたら「友達」を作りたい
松井 :人に寄り添うものを作り続けていきたいです。家の中心にいる存在とか、人との関係をより密にしていく商品ですね。物理的に、何かができる/できないというより、心を満たしてくれる存在かどうかを突き詰めていきたいです。
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