. 9割がマニュアル車」だったのか?AT大国・日本との違いと、急速な「AT化」の理由 | Business Insider Japan
9割がマニュアル車」だったのか?AT大国・日本との違いと、急速な「AT化」の理由 | Business Insider Japan
9割がマニュアル車」だったのか?AT大国・日本との違いと、急速な「AT化」の理由 | Business Insider Japan

なぜ欧州では「9割がマニュアル車」だったのか?AT大国・日本との違いと、急速な「AT化」の理由

想像してみてほしい。中世から続く起伏の激しい石畳(コブルストーン)の坂道に、複雑に交差する路面電車(トラム)の軌道。そんな運転初心者にとって過酷極まりないインフラ環境のなかを、白髪の高齢女性や免許を取り立ての若者たちが、小型のルノーを駆って極めてアグレッシブに走り抜けていくのである。雨に濡れて滑りやすくなった急勾配での坂道発進でも、エンスト一つ起こさない。絶妙なアクセルワークと見事な半クラッチでトラムの横をすり抜けていくその姿には、つい目を奪われてしまう。

ハンガリーの社会においてMT車の運転は「歩行」や「自転車の操作」と同等の、完全に身体化された基礎的な生活スキルとして認識されており、特別な技術を誇示するものでは決してない。2000年代初頭、ドイツやイギリスといった欧州の主要市場において、新車登録に占めるMT車の比率は約90パーセントという圧倒的な水準に達していた。さらにイタリアやフランス、スペイン、そして筆者の住むハンガリーなどの一部の国々に至っては、その比率が95パーセントを超えていたほどである。

「ラウンドアバウトだらけ」という環境

欧州におけるMT車の普及を語る上で、道路のつくりや交通事情の違いの構造的な違い、とりわけ「信号機がない交差点」の存在を無視することはできない。ヨーロッパの郊外や都市部をドライブすればすぐに気づくのが、交差点の大部分が信号機ではなく「ラウンドアバウト(環状交差点)」によって処理されているという事実である。

欧州のラウンドアバウトは、日本の交差点のようなストップ・アンド・ゴーの連続になることを防ぎ、交通の流れを止めずに流し続けることを目的として設置されている。ドライバーはラウンドアバウトに近づきながらシフトダウンしてエンジンブレーキを効かせ、円内を走るクルマの切れ目を見極めて半クラッチで滑らかに進入し、アクセルを踏み込んで一気にシフトアップして退出していく。この「減速・進入・加速」の一連の流れるようなリズムを構築する上で、ドライバーの意思をダイレクトに駆動輪に伝えることができるマニュアルトランスミッションは、欧州の道路環境と極めて親和性が高い。

しかしながら、ATと比べてかなり複雑な操作が要求されることには変わりない。日常の買い物や通勤の範疇であれば問題になることは少ないが、非日常の過酷な環境に置かれると牙を剥く。筆者が英国でレンタカーのフィアット500で長距離ドライブ旅行に出かけた際のことだ。見知らぬ土地の複雑なナビゲーションに神経をすり減らしながら、数キロごとに果てしなく連続するラウンドアバウトに進入と退出を繰り返すうち、左足と左手は次第に疲労困憊していった。夕闇が迫る頃には集中力が途切れ、交差点のど真ん中で痛恨のシフトミスやエンストを連発し、後続車から容赦ないクラクションを浴びせられるという冷や汗をかく事態に陥ったのである。

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