サン=サーンス 交響曲第3番『オルガン付き』
カミーユ・サン=サーンス (Camille Saint-Saens,1835-1921)作曲の交響曲第3番 ハ短調 作品78『オルガン付き』 について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。 パイプオルガンを中心的存在として交響曲に取り入れた野心的な試み です。主役はほぼパイプオルガンです。交響曲としても優れていて、 第2部前半のメロディや後半のパイプオルガンとオケがダイナミックに演奏する主題も有名 です。アマチュア・オーケストラでも記念演奏会などで良く取り上げられる人気曲です。
解説
サン=サーンス作曲の交響曲第3番『オルガン付き』について解説します。
交響曲第3番『オルガン付き』は最後に書かれた交響曲で、 サン=サーンスの交響曲の最高傑作 です。1886年に作曲されました。サン=サーンスが51歳の時、つまり円熟期にあたる時期に書かれました。サン=サーンスは1876年に初めてロンドンに訪れ、オルガンのコンサートを開きましたが、それ以来、彼の名声はロンドンで高まりました。この交響曲第3番はロンドン・フィルハーモニック協会の委嘱で作曲されました。
初演は1886年5月19日 にサン=サーンス自身の指揮により行われ、その壮麗さと美しさによって、高い評価を受けました。
全曲は2楽章で構成されています。しかし、それぞれの楽章に第1部、第2部があり、楽章中は連続して演奏されますが、実質的には4楽章の交響曲に近い構成といえます。なぜユニークな2楽章構成としたのか、不思議ですが、「オケのみ→オルガンあり、オケのみ→オルガンあり」という全体の構造を見るとシンメトリックといえます。またこの交響曲は精緻で完成度の高い循環形式が使用されています。フランクが創始したフランス風交響曲の形式です。
パイプオルガンが中心この交響曲はオルガン協奏曲ではありませんが、全曲をパイプ・オルガンが支配しています。曲調からも大規模なパイプオルガンのある大聖堂で演奏するのに良い曲ですが、スコアを見ると有名な第一楽章前半の弦セクションなど、かなり細かいアンサンブルがあるため、残響の豊富な大聖堂などで演奏するのは、かなり難しそうです。それでも最近は大聖堂での演奏があり、やはり素晴らしい効果を得ています。
よくカップリングされているプーランクのオルガン協奏曲は、パイプオルガンをソロとした近現代の協奏曲です。このように、当時は宗教関係が中心であったパイプオルガンをクラシックの世界に持ち込んだことは、今、考えるよりもずっとインパクトがあったに違いありません。
曲の構成前述しましたが、サン=サーンスの交響曲第3番『オルガン付き』は、2楽章構成です。各楽章が2部で構成されているため、実質は4楽章構成だといえます。
第1楽章-第1部:アレグロ・モデラート 第1楽章-第2部:ポコ・アダージョ 第2楽章-第1部:アレグロ・モデラート-プレスト 第2楽章-第2部:マエストーソおすすめの名盤レビュー
サン=サーンス作曲の交響曲第3番『オルガン付き』の名盤をレビューしていきましょう。
バレンボイム=シカゴ交響楽団 壮麗で透明感と神々しさのある名盤オルガン ガストン・リテーズ 指揮 ダニエル・バレンボイム 演奏 シカゴ交響楽団
バレンボイムと相性の良いシカゴ交響楽団の演奏です。このコンビは結構他では聴けない演奏を聴かせてくれます。1975年録音なので古くはありませんが、とても良い録音です。
第1楽章は最初から独特の透明感で神妙です。盛り上がってくると、透明感と伸びのあるサウンドでスケールが大きいです。 『オルガン付き』らしい壮麗さが感じられます。 テンポの変動は結構ありますが、シカゴ響のアンサンブルの正確さには影響ないようです。弱音は弦の響きが透明で神々しさがあります。第2部は静かで厳かな雰囲気でオルガンの響きも素晴らしいですね。
第2楽章は中庸くらいのテンポで、有名なメロディも輪郭がはっきりしています。沢山のモチーフのある部分を上手く綺麗に演奏しています。コラール風な所もきれいなカノンになっていて、この部分はデュトワ盤よりも美しくスリリングです。第2部はダイナミックなパイプオルガンで始まります。パイプオルガンの音色とオケの透明な音色が上手くブレンドされ、とても良い響きになっています。 シカゴ響の金管はダイナミックですが、ここまで強奏して音色が全くにごらない所が凄い です。ラストの盛り上がりも半端ではありません。
デュトワ=モントリオール交響楽団 色彩感のある響きの饗宴、スタンダードな名盤オルガン ピーター・ハーフォード 指揮 シャルル・デュトワ 演奏 モントリオール交響楽団
デュトワ=モントリオール交響楽団の『オルガン付き』は、教会で録音されていて残響も適度に多く、1982年録音としては、しっかりした音質です。 サンサーンスの『オルガン付き』のスタンダード であり、聴くほうの期待を裏切らない、壮麗で色彩的な演奏です。
第1楽章は オケとパイプオルガンのアンサンブルが素晴らしく、パイプオルガンとオケが一体化 したかのようです。神妙ですが、ふくよかさと安心感のある響きになっています。第2楽章は速めのテンポで良いですが、少し響き過ぎな印象もあります。教会だからこんなものかな、とも思いますけど。後半はさらにテンポアップして、 圧倒的な色彩感とスリリングさで楽しく聴けます 。第2部への移行部は透明感があって綺麗です。第2部は分厚いダイナミックなパイプオルガンで始まります。その後のコラールは聴き物です。
全体的に想像していたより力強く、壮麗さのある演奏ですね。しかし、 一般的な期待を裏切るような所は全くなく、スタンダードというに相応しいCD です。聖堂で演奏していますが、宗教的な神々しさはそれほどなく、色彩感とサンサーンスの素晴らしいオーケストレーションを堪能できます。
ロト=レ・シエクル スコアの細かい表現まで迷わず音化、目から鱗の名盤オルガン ダニエル・ロト 指揮 フランソワ=グザヴィエ・ロト 演奏 レ・シエクル
ロト=レ・シエクルの興味深いディスクです。オリジナル楽器を使用したうえで、コンサートホールではなく、パリのサン=シュルピス教会で録音しています。サン=サーンスの時代は、オーケストラが拡大していった時代です。特に低音楽器が徐々に拡充され、ダイナミックな演奏が出来るようになってきました。しかし『春の祭典』を初演した1913年でさえ、今に比べると明らかに低音は軽かったのです。それも含めてきちんとピリオド奏法を行っており、当時のオーケストラの響きを再現しています。一方、パイプオルガンは古いものなら響きは変わらないです。
第1楽章は、速めのテンポでメリハリがあります。弦の刻みも正確です。 金管もダイナミックで小気味良い表情が良くついていて、楽しめる演奏です。第1楽章から細かい表情を上手く表現した演奏で、フォルテになると凄くダイナミックでパーカッションも容赦なく鳴らしてきます。 その響きは他のCDでは聴けないもので、目から鱗です。 第2部はオルガンとオケが同じくらいの音量でミックスして聴こえてきます。オケはオルガンの響きの上で、かなり感情的に主題を演奏しています。だんだんとオルガンの存在感が増していき、オケの演奏は平穏になっていきます。
第2楽章は圧巻で力強く、アクセントの強い演奏 です。教会でのライヴ録音のためか、物凄い残響の長さです。あまりにアクセントが強すぎたので、これまであまり気にならなかったのですね。 第2部のパイプオルガンの音圧は凄くリアル です。ヨーロッパで大きめの教会についているパイプオルガンを聴くとこんな音がしますね。ただ音量が大きすぎる気もしますけれど。この曲をライヴで録音することの難しさを感じます。
ヤンソンス=バイエルン放送交響楽団 (2019年) 清涼感があり表現豊か、ヤンソンスの円熟を感じる名盤パイプオルガン イヴェタ・アプカルナ 指揮 マリス・ヤンソンス 演奏 バイエルン放送交響楽団
ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団の演奏です。2019年の新しい録音で音質は非常に良いです。引退直前のライヴ録音で、 ヤンソンスの円熟による奥深さが感じられる名盤 です。
第1楽章の 冒頭から清涼で清々しい響きで心が洗われます 。ヤンソンスの表現はしなやかで繊細、かつダイナミックさが共存しています。アンサンブルのクオリティも高いです。さらに円熟した表現の深みがあります。録音の良さを加味しても、ここまで神々しく清涼な演奏は他にはありません。木管のソロも高音質で響き渡ります。第2部は穏やかさの中にも繊細な表現があり、音楽の喜びを感じます。パイプオルガンは控えめにしっかりと入り、神々しいです。 一つ一つのフレーズが有機的に丁寧に演奏され、とても感動的 です。要所でのパイプオルガンは色々なストップが繊細に響きます。
第2楽章はシャープなリズムで始まります。 絶妙な残響で、色々な音の洪水のように響きます。 それで居ながら、分離はしっかりしていています。速めのテンポで、色々な楽器の音が少しずつ交錯しあい、色彩感たっぷりです。第2部への導入では、透明感が高く神々しさのある対位法のアンサンブルが聴けます。第2部に入るとオルガンは堂々と響き、オルガンとオケのバランスはライヴと思えないほど良いです。 オケは有機的で自然な表現のまま、ダイナミックに演奏 しています。バイエルン放送響は元々パワーのあるオケですが、このディスクでは荒くなったりせずクオリティが高いです。音に厚みが出たり、急に薄くなったりと、サン=サーンスのオーケストレーションの妙が良く伝わって来ます。ダイナミックに曲を締めくくります。
ヤンソンスの円熟と音楽作りの充実ぶりに加え、バイエルン放送交響楽団の演奏や録音スタッフの意気込みが伝わってくる名盤です。カップリングのプーランクのオルガン協奏曲も同曲を代表する名演です。
パッパーノ=ローマ聖チェチーリア国立音楽院管 イタリアのコンビによる熱気に溢れた名盤オルガン ダニエレ・ロッシ 指揮 アントニオ・パッパーノ 演奏 ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団
イタリアの指揮者パッパーノとローマ聖チェチーリア国立音楽院管の演奏です。イタリアのコンビの演奏は珍しいですが、近年レヴェルアップが目覚ましいです。 2016年録音と新しく高音質 であることも魅力です。
第1楽章はパッパーノのリズミカルな指揮と正確なアンサンブルで、熱気を帯びて盛り上がっていきます。ストレートで情熱的で感情表現が素晴らしいです。複雑なリズムを執拗なまでに刻み、その結果 スリリングに音の洪水のように白熱 してきます。リズムの正確さも特筆に値します。第2部は静かに穏やかに進みます。オルガンは少し控えめに入ります。 オケは弦のまとまりが良く、柔らかめの響き です。後半、オルガンが出てくると神妙な雰囲気になります。歌いまわしに艶やかさがあり、少しイタリア・オペラを思わせる所がありますね。
第2楽章はパッパーノらしく 速いテンポでリズミカル、とても熱気のある演奏 です。弦の熱気のある響きが印象的です。残響は特に長い訳ではなく、アンサンブルは密度が濃くしっかりしています。会場のオーディトリウム・パルコ・デラ・ムジカは木目調の響きですね。第2部への導入の対位法もきれいに聴こえます。弦の響きが美しく清涼な雰囲気です。第2部は パイプオルガンの壮麗な響き で始まります。オケのトゥッティもダイナミックですが、この パイプオルガンの迫力は凄い です。後半は熱気を帯びて盛り上がっていき、ダイナミックに曲を閉じます。
ミュンシュ=ボストン交響楽団 ミュンシュらしい壮大で爽快な名盤オルガン ベルイ・ザムコヒアン 指揮 シャルル・ミュンシュ 演奏 ボストン交響楽団
ミュンシュとボストン交響楽団の演奏です。ボストン交響楽団の正確なアンサンブルは当時としては凄いですね。
第1楽章は前半から結構鳴らしています。どんどん盛り上がり、熱気を帯びていきます。 5分もするとほぼ全開 ですね。かなり豪快なのですが、会場の響きが良いことと、ボストン響の弦のサウンドが美しいので、とても壮麗です。第2部のパイプ・オルガンは、オケと一緒になってちょうどよいバランスです。パイプ・オルガンの音色が良いです。録音も低音までしっかり入っているようです。オケも色々な表現をしていて楽しめます。
第2楽章は速めのテンポです。ボストン響のダイナミックな演奏ですが、 ミュンシュが指揮すると爽快 です。第2部でパイプオルガンが壮大に入ってきます。パイプオルガンが入っても、主役はミュンシュですね。ダイナミックですが、教会のオルガンのように神妙になることはありません。 ミュンシュもオケも自己主張していて、パイプオルガンもオケも一緒になって力強くダイナミックに盛り上がります。
アンセルメ=スイス・ロマンド管弦楽団 フランス音楽の名匠アンセルメの辿り着いた境地指揮 エルネスト・アンセルメ 演奏 スイス・ロマンド管弦楽団
アンセルメ=スイス・ロマンド管弦楽団のディスクは、昔からの定番です。アンセルメは近年、リマスタリング技術の進歩により再評価されています。それでもやはり古さが感じられるので、内容の充実した名盤ですが、少し下のほうに配置しています。
第1楽章は神妙で、遅めのテンポで進んでいきます。結構ダイナミックに盛り上がります。録音状態は1962年としては、とても良いと思います。手慣れた感じが伝わってくるベテランらしい名演です。 第2部ははっきりと平穏な音楽に変化し、第1部との対比を上手くつけています 。もっと録音が良ければ透明感のあるサウンドが聴けたかも知れませんが、十分伝わってきます。
第2楽章は他のCDに比べ少し遅めなテンポで始まります。有名な主題ははっきり演奏されています。残響も少なめな一般の会場で録音しているので、後半になっても響きが濁ることはありません。カノンは綺麗に演奏されています。 第2部のパイプオルガンはしっかり録音に入っていて、オケとのバランスも良い です。シンバルの音は少し割れているので、ギリギリの所を狙って調整したのでしょうね。最後はアッチェランドして盛り上がって終わります。
最近のバレンボイム盤やデュトワ盤に比べるとオケの弱さを感じますが、オーケストラや録音技術の進化によるものですね。 アンセルメはフランス音楽の大ベテランとして、当たり前のように本質を突いた演奏をしている と思います。
小林研一郎=名古屋フィル コバケンらしい熱くダイナミックな演奏!指揮 小林研一郎 演奏 名古屋フィルハーモニー管弦楽団
小林研一郎と名古屋フィルのライヴ録音です。小林研一郎のディスクの中でも特に素晴らしい演奏で、会場も熱狂の渦に包まれています。聴いていてとても楽しめる一枚です。
第2楽章はテンポは遅めですが、 熱いサウンドでコバケン節が炸裂 しています。名古屋フィルは土台がしっかりしたアンサンブルで、レヴェルが高い演奏を繰り広げています。欧米の演奏家とは一味違う情熱的な響きです。弦の音色に熱気が織り込まれています。複雑なアンサンブルの個所も安定しており、名古屋フィルの地力の高さを感じますね。
第2部の オルガンは厚みのあるダイナミックな響き です。オルガンとオケのスケールの大きな音楽で始まります。弱音の弦の響きや木管は柔らかくしなやかです。強奏になるとコバケンらしい唸りでオケも凝集された熱気のある響きを出しています。後半はオルガンもオケも熱気をはらんで盛り上がります。 金管も好調で厚みのある響き を聴かせてくれます。ラストは熱狂的に曲を締めくくります。
エッシェンバッハ=フィラデルフィア管弦楽団 ロマンティックで感情の入った名演オルガン オリヴィエ・ラトリー 指揮 クリストフ・エッシェンバッハ 演奏 フィラデルフィア管弦楽団
エッシェンバッハ=フィラデルフィア管弦楽団の演奏です。エッシェンバッハは最近たまにしか名前を聞かなくなってしまいました。しかし、昔、シューマン全集はとても良かったですし、感情的でロマンティックな演奏ができる指揮者です。
エッシェンバッハは少し速めのテンポを取っています。2006年のライヴ録音ですが、細かい弦の刻みは少し荒めに録音されているような気がします。会場の響きか、録音の問題でしょうか?とはいえ、 エッシェンバッハの演奏は感情的表現が前面に出ています。それでテンポが変動したりしていて細かい所は合わせ切れていないかも知れませんね。 個人的には感情的表現が前面に出ているほうが聴きやすいので良いですけれど。第2部の静かな音楽になっても、感情表現の強さがあります。パイプオルガンは少し遠い所で鳴っている感じで、弦楽器が目立ちますね。
有名な第2楽章は急速なテンポでスリリング です。このテンポはとても良いですね。ピアノとのからみは正確なアンサンブルですけれど、少し綺麗さに欠けるような気がします。その代わりとてもスリリングです。オケの方がベルリンフィル並みに超絶技巧なアンサンブルをするなら、かなり色彩的で凄い演奏になったのかも知れません。弦楽器にコラールが出てくる所は綺麗な響きです。第2部のパイプオルガンはオケを圧倒するほどダイナミックに出てきます。対するオケのほうもダイナミックで、少し音が濁っても力強い音楽を展開しています。 最後の盛り上がりもスリリングで熱気があって良い です。
最近の2006年録音なので、もう少し透明感のあるリアルな録音を期待したのですが、ライヴ録音だとパイプオルガンとオケのバランスが難しそうですね。しかし 交響曲第3番は『オルガン付き』ですが、色々な要素が入った名曲です。ロマンティックで強い感情表現を聴きたい人には良い演奏です。 個人的な好みなのですが、一般的にはどうでしょうかね。
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バーンスタイン=フランス国立管弦楽団指揮 レナード・バーンスタイン 演奏 フランス国立管弦楽団
楽譜
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