教養ドキュメントファンクラブ
自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。
3/7 サイエンスZERO 3.11から10年「地震学者たちが挑んだ"超巨大地震"」
最先端の地震研究が東日本地震の謎に迫る東日本地震はマグニチュード9という観測史上例のない超巨大地震だった。これは今までの常識を覆すものであり、どのようなメカニズムでこんな超巨大地震が発生したかは研究者にも分からなかったという。しかしその後の研究の進展によって新たな事実が判明してきた。
東日本地震ではプレートが東西200キロ、南北450キロという広範囲で動いている。ここで起こることが想定されていた地震は最大マグニチュード8であり、地震の規模としては30倍になっているという。なぜそのようなことが起こったのか。
過去のデータからこの領域の地震は複数に分かれた領域で発生し、それぞれは連動しないと想定されていたという。しかし実際には6つの領域を巻き込んだ地震が発生してしまったのだという。
2つの地震が発生していたこの謎に地震発生直後から挑んできたのが東京大学の井出哲教授。この地震の特徴は観測された地震波に現れていたという。井出氏が注目したのは地震波が2つの山を持つこと。観測された地震波を集めて地下の動きを調べたところ、初めに宮城沖で地震で発生、しかしこれがこのまま収まらず、それまでは動かないと考えられていた日本海溝のすぐ近くのプレート境界が動き始めたという。通常地震が起こるのは海底面から数十キロの深い地点であり、浅い地点は動かずにクッションのように吸収するというのが地震学の常識だったという。しかし今回は深い部分で起こった地震が浅い部分で止まらず、浅い地層が一気に動いてしまったのだという。このことが陸側の広い範囲に力を加え、さらに地震が発生、それが2つめの山だというのである。
井出氏は地震発生後にこのことを直ちに発表、実際の海底調査でも浅い部分が50メートルも動いていることが判明したという。なぜこのようなことが起こったのかを解明するために地震の翌年に地球深部探査船ちきゅうがこの地域の地層の回収を行って調査した。
その結果、地層からは粘土が検出されたという。この粘土を大阪大学の廣野哲朗准教授が解析した。地震の時にこの辺りの地層は摩擦熱で800度程度に加熱していたと推測されるという。そこで廣野氏がこのサンプルを加熱したところ、温度上昇と共に試料の水分が抜けていくが、400度を越えたところで粘土に含まれる水酸基が水として抜けることで急激に質量が減少することが分かったのだという。この大量の水によってプレート境界が浮かび上がって摩擦が急激に減少するサーマル・プレシャライゼーションが発生したと推測した。シミュレーションの結果、15秒で50メートル以上滑るということが分かったという。この海底の変形は津波の原因となった可能性が高いという。
地震発生の鍵を握るかもしれないスロー地震また地震が発生したときにそれが巨大化するのか小規模で収まるかに付いては、判別することは困難であることも分かったという。井出氏によるデータ解析の結果、地震の始まった段階では大規模なものでも小規模なものでもほとんど波形に差がないことが分かったのだという。地震の規模の予測が困難であるということである。
地震の予測は困難であるが、もしかしたらそれに役立つのではと注目されているのがスロー地震である。これはゆっくりとプレートが動く現象であり、これが地震予測につながるのではというのは、実はこの番組で以前にも紹介されている。
スロー地震は地震のエネルギーを緩和すると考えられていたのだが、東日本地震では震源のすぐ近くで広範囲で発生していたことが分かったという。今回はこのスロー地震が大地震の最後の引き金になったのではと推測されている。
この地域に海底観測網であるS-netが設置されたことで、これらのスロー地震はつぶさに観測できるようになっていると言う。最前線で解析に挑んでいる京都大学の西川友章氏らの研究の結果、スロー地震の全体像が明らかになった。観測の結果明らかとなったスロー地震の震源は岩手と茨城の沖合で多発していて、巨大地震の震源近くにほとんどない。これらの地域では大地震が起こっていないことから、この地域では歪みの解消が起こっていると考えられるという。さらに研究が進むことで巨大地震の予測につながるのではと期待されている。
忙しい方のための今回の要点・東日本地震はそれまで地震学の常識を越える超巨大地震であったが、その発生のメカニズムが明らかになってきた。・この地震では今まで連動はしないとされてきた広範囲で地震が発生している。・地震はプレートの奥深いところで発生し、浅いところでは発生しないとされていたが、今回の地震では浅い地層が一気に50メートルも移動していることが判明した。・これには粘土から発生した水でプレートが浮き上がって摩擦力が低下するサーマル・プレシャライゼーションが発生したことが明らかになってきた。・巨大地震の予知につながるかもと注目されているのがスロー地震。今回の地震では震源地核で巨大なスロー地震が発生しており、これが大地震発生の最後の一押しになった可能性が指摘されている。・東日本沖に敷設された海底地震観測網のS-netで直接観測が可能となったことから、スロー地震と大地震との関わりが解明されることが期待されている。
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