. 26年越しの霊感 HEATWAVE、ソウル・フラワー・ユニオン 歌詞の違いについて | ∴bandshijin∵ カバーしたい歌
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満月の夕 26年越しの霊感 HEATWAVE、ソウル・フラワー・ユニオン 歌詞の違いについて

ふたつの版でサビの歌詞は共通。メロディも歌詞が共通する部分は概ね一緒…なのだけれど、曲のうねりが全然違うのだ。Aメロからの流れの関係もある。歌詞が異なる部分に関しては、メロディやことばの持つリズムがまったく違う。ふたつの版は、同一の遺伝子から生まれた双子? いや、両親は一緒かもしれないが違った遺伝子を持った兄弟? いや、父親や母親の片方がちがう、異母・異父兄弟? あるいは…? とにかく、そんなふうにして、近親のものであると同時に、大いに違うのだ。

中川版の1番Aメロ

中川版

“時を超え国境線から 幾千里のがれきの町に立つ この胸の振り子は鳴らす “今”を刻むため”“飼い主をなくした柴が同胞とじゃれながら車道を往く 解き放たれすべてを笑う 乾く冬の夕”

(ソウル・フラワー・ユニオン『満月の夕』より、作詞:中川敬 作曲:中川敬、山口洋)

“がれきの町に立つ”とはそこに主体が語っているような表現。2行目の描写も、そこにいて実際に見た光景のよう。もちろん、メディアが伝えるものを見た2次的な知見をもとに語ることができないとはいわないが、飼い主を伴わないペットを、人間が生活している平常時の町で見かけることは稀だろう。人間のための建物がならぶ地域に、ペットだけがいることの異様さを私は東日本大震災のときにメディアを通して見知った。中川敬は、1995年の阪神各地でこうした光景を見たのだろうか…(きっと、見たのだろうと想像する)。

山口版の1番Aメロ

“夕暮れが悲しみの街を包む 見渡すながめに言葉もなく 行くあてのない怒りだけが胸をあつくする” “声のない叫びは煙となり 風に吹かれ空へと舞いあがる 言葉にいったい何の意味がある 乾く冬の夕”

(HEATWAVE『満月の夕』より、作詞:中川敬、山口洋 作曲:中川敬、山口洋)

阪神を実際に巡る中川から、現地のことや、それをふまえて書きあがった(山口と共作で進めるはずの)曲(『満月の夕』と題される)についての連絡を受けた山口の気持ちはどのようなものだったろう。様々な思いが交雑したのではないか。

行くあてのない怒りだけが胸をあつくする” と綴る、その「怒り」には、遠くで被災地を見ているだけの自分の無力への怒りやもどかしさ、何か行動したい欲求、それができない感情の「じたんだ」が含まれているのかもしれない。

声のない叫びは煙となりこの部分は、当時東京にいて「メディアを通して現地の様子を知る」山口だからこその表現かもしれない。ヘリコプターなどからの撮影による俯瞰で、都市から無数の煙が立ち上る様子に心を痛めたのではないか。現地の壮絶な悲痛さを一定の距離から射抜いた映像は「無言」。レポーターの声のうしろにせいぜい「キーン」「バババババ…」といった、ヘリや撮影環境に付随するノイズか混入しているくらいで、臨場感ある地上の生の音声はそこには聴き取れないだろう。でも、無数に立ち上る煙は、現地の人の生活の、命のかかった叫びなのだと。あるいは、離れたところにいる己の無力を煙に重ねているのだろうか。そんなことを思わせる歌詞。

中川版 2番のメロの歌詞

“星が降る 満月が笑う 焼けあとを包むようにおどす風 解き放たれてすべてを笑う 乾く冬の夕”

(ソウル・フラワー・ユニオン『満月の夕』より、作詞:中川敬 作曲:中川敬、山口洋)

山口版 2番のメロの歌詞

“絶え間なくつき動かされて 誰もが(この)時代に走らされた すべてを失くした人は どこへ行けばいいのだろう”

“それでも人はまた汗を流し 何度でも出会いと別れを繰り返し 過ぎた日々の痛みを胸に いつかみた夢を目指すだろう”

(HEATWAVE『満月の夕』より、作詞:中川敬、山口洋 作曲:中川敬、山口洋)

後記

湧き出るように紡がれる中川版は、被災地での一晩の満月の輝きが霊感のもとになっているようだ。その瞬間を、その現場で中川がつかまえた。(2015年1月15日放送『満月の夕 震災が紡いだ歌の20年』(NHK)で中川は「自分の中から流れるように言葉とメロディが出てきた」と語った。)

ご笑覧ください 拙演

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